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【第四回】伊藤洋一氏 / クラウド時代のグローバル経営術(前編)

産業構造と発想の転換を図り、“ループ的”で誘引力を備えたものづくりを

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ものづくり立国・日本の立場が危うくなっている。コモディティ化した技術では、成長著しい新興国に太刀打ちできない。今後、日本企業はどのような方向を目指すべきなのか。その中でICTが果たす役割とは。

視点を変えれば、新しい日本経済の姿が見えてくる

国内消費の冷え込みや少子高齢化の進展、とどまりを見せない円高などから、企業規模を問わずグローバル化は不可避の選択だとの指摘があります。特に、高い品質で「メイド・イン・ジャパン」というブランドを築いた日本のものづくりは、新興国の台頭によって苦境に立たされており、日本企業は大きな課題に直面しているのが現状です。

顔写真:住信基礎研究所 研究主幹 伊藤洋一氏

日本のものづくりが苦しい立場にある大きな理由の1つは、技術のコモディティ化が進み、一定品質のものを安い海外の労働力で作れるようになったことにあります。月の工賃が1万円にも満たない安い労働力で大量生産するのですから、その差は歴然です。価格競争をしても勝ち目はなく、コモディティ化した商品で勝負を挑むのは賢明ではありません。

かつて日本はカラーテレビで世界に圧倒的存在感を示したとか、圧倒的な地位を占めるのはビデオカメラだけだとか言うのは時代錯誤な考えです。今は“付加価値”を付けるべき段階なのに、シェアにこだわったという点がいちばん大きな間違い。企業は発想の転換を図り、産業構造を見直す必要があります。

例えば少子高齢化について、国内マーケットの縮小という側面ばかりがクローズアップされます。しかし別の見方をすれば、高齢者層のマーケット拡大でもあるわけです。旅行産業や介護など、高齢者が求める商品やサービスを開発すれば、新しいビジネスも可能になるでしょう。

デパートの売り上げが落ちていると言っても、インターネット販売などは増えていますし、GDPに対する比率にしたら、日本の消費は決して落ちていないはずです。こうやって別の視点を持てば、日本経済の新しい姿が見えてきます。グローバル展開といった意味でも同様に、これからを生き残るためには、いかに発想を転換できるかが重要になってくるのではないでしょうか。

そういった意味で成功した事例として、どんな企業がありますか。

例えば次世代中型ジェット旅客機として注目を集めている「ボーイング787」。機体部品の約35%を日本メーカーが手がけています。その1社である化学メーカー大手の東レは、炭素繊維の技術を活かした「炭素繊維強化プラスチック」という素材を開発しました。比重が鉄の4分の1しかないのに強度は約10倍という革新的な素材性能は大きく評価され、ボーイング787の機体重量の半分以上に採用されているといいます。軽くて丈夫な機体は、“飛行機は鉄の塊”というこれまでのイメージを払拭し、燃費効率と航続距離を大幅に向上させたのです。

空調機メーカー大手のダイキン工業は、中国をはじめとする新興市場で販売台数を伸ばしています。国内で成功した高機能化にこだわらず、ハイエンド製品向け技術を応用・簡素化したノンインバーターエアコンで、現地のニーズを掴みました。進出する国ごとに消費者の要望を見極め、ハイエンドからボリュームゾーンへと軸足を移しながら製造・販売体制を強化し、躍進を続けています。

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