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【第三回】米倉誠一郎氏 / 「創発的破壊」を促すICT利活用(後編)

トップの決断力と知的好奇心が新たなICT活用を導く

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イノベーションの源泉となるのが、一人ひとりの小さな活動である“創発”。そうした小さなエネルギーを大きなイノベーションに発展させるために企業は、そしてトップはどうすべきなのか。これからのビジネスを考える上でICTが果たす役割も大きい。

知的好奇心を持てば“戦場”は見えてくる

“創発”に向けた一歩を踏み出すために、トップが踏まえておかなければならないことは何でしょうか。

顔写真:一橋大学イノベーション研究センター長 米倉誠一郎氏

強いコミットメントと意思決定能力ですね。その決断ができたのが、キヤノンの御手洗冨士夫氏や日産のカルロス・ゴーン氏でしょう。

御手洗氏は売上優先から利益優先へと戦略の転換を図り、パソコンや携帯電話関連など、不採算事業から撤退しました。その上で、プリンターのインクといった継続的に需要が見込める事業に注力し、堅調な業績に回復させました。

ゴーン氏が行った村山工場の閉鎖も、あの決断がなければ大変な赤字から回復することはなかったはずです。そういった点では、新たな視点で決断を下し、カットする勇気を得た企業が成功しています。

日本で頑張っているのは創業企業です。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭氏とバルスの髙島郁夫氏。両社とも上場を廃止しました。あと、アパレルのワールドも。どれも経営者自身が作った会社です。株主の意見を聞いていると決定が遅くなりがちですから、それよりも上場を廃止して意思決定スピードを高めたいという狙いがあるのでしょう。

バルスの髙島氏は、「日本にいては何も分からない」と言って自宅を香港に移しました。すると、数百億だと思っていたビジネスが、世界には数千億のマーケットがあることに気付いたんです。バルスの「フランフラン」にしろ、ああいった可愛い小物はアジアでも絶対にいけるはずで、だから彼はディベロッパーと組んで、都市開発のときには必ず出店するというモデルに変えたんです。見えてきますよね、世界が。

今、日本人の好奇心がすごく下がっていると思います。世界に出るにも、ICTを取り入れるにしても、目を効かせて常にアンテナを張っていないといけません。知的好奇心を失っていては、“戦場”がどこか分からないのです。

ICTに関して、トップは細かいことが分からないならそれもでも構いません。最低限、ICTで出来ることやSNSの知識くらいは持ちながら大きな方向性だけ決めて、あとは現場からの意見を否定しないことです。若い人たちのアイディアを「おもしろいじゃないか」と言ってみる、これには知的好奇心が必要です。大きな流れを決める以外は任せて、最後の責任はトップが取る、ということではないでしょうか。

ICTは非常に大きな力を持っていて、まさに創発的破壊の担い手です。それを否定してはいけません。

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