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超大容量データの遠隔バックアップの取り組み

川崎重工 with 富士通 広域災害対策用のリモートバックアップ環境を新たに構築 本社や生産拠点の重要データを富士通のデータセンターでバックアップ

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輸送用機器や産業用機械、エネルギー・環境設備などの製造 を手がける川崎重工業株式会社様では、広域災害に備えるべくリモートバックアップ環境を新たに構築した。各工場や事業部で稼働中のストレージから重要な業務データを富士通が首都圏近郊に設置するデータセンターへ転送し、万一の被災時にも迅速に業務復旧が行える環境を実現。また、業務システムごとの要件に応じたRTO/RPOを設定することで、災害対策コストの最適化も実現している。

川崎重工業株式会社様 外観写真

【導入事例概要】
サービス: ディザスタリカバリセンターサービス
製品: PRIMERGY BX600、NR1000F等
【課題と効果】
1 超大容量業務データの効率的な遠隔バックアップ 拠点側ストレージの統合・標準化を進めることで、シンプルなバックアップ環境を構築。Point-in-time Copy方式を活用し、遠隔地へ転送するデータ量を削減。
2 災害対策コストの削減 事業継続上の優先度に応じて各業務システムのRTO、RPOを設定。早期復旧の必要性が薄いシステムはデータのみのバックアップとすることでコストを削減。

導入の背景

リスクマネジメントの強化を目指し重要業務データの遠隔バックアップに着手

3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、企業のICT部門でもBCPやディザスタリカバリーに対する関心が再び高まりつつある。ビジネスとICTの一体化が進む現在、ICT資産の保全は企業経営上の重要課題だ。万一の災害時にも、システムやデータを確実に守る仕組みが求められる。

こうした中、いち早くリスク対策の取り組みを進めてきたのが川崎重工業株式会社様だ。モーターサイクルやジェットスキー、航空・宇宙、鉄道車両、船舶、エネルギー・環境設備、産業用機械など、多面的な事業を展開する同社だが、阪神淡路大震災の際には生産拠点に大きな被害を受けた。この時の経験を踏まえ、リスクの洗い出しと改善活動を連綿と続けてきたのだ。

さらに、2007年、同社では重要業務データの遠隔バックアップの取り組みに着手した。阪神淡路大震災では直下型の地震であったが、近年警戒されている東海、南海、東南海地震では、より広いエリアにおよぶ被害が懸念されている。こうした広域災害に対しても、万全の備えを施そうというのがこのプロジェクトの目的だ。

川崎重工業株式会社 中野 義久氏の写真
川崎重工業株式会社 企画本部
情報企画部 部長(理事)
中野 義久

もっとも、実際にシステムを構築するうえでは、さまざまな課題もあった。同社企画本部 情報企画部 部長(理事) 中野 義久氏は、「当社には7つの事業部門がありますが、業種や業態がすべて異なるうえに、それぞれの事業部門にICT部門が存在します。生産管理システムなどもそれぞれの事業分野の要求に適したものを個別に構築しているため、RTO(注1)やRPO(注2)に対する考え方が事業部門ごとに違っていたのです」と振り返る。

しかも、バックアップ対象のデータ量が、膨大である点も大きな課題となった。「たとえば航空宇宙部門では、一製品あたりの部品数は100万点近くにも上ります。最近では設計の3次元化も進んでいますので、データの容量自体も非常に大きい。ちなみに、生産用のマスタデータの件数も、航空宇宙部門だけで1,000万点以上あります」と中野氏は続ける。

航空宇宙部門は比較的製品の部品点数の多い事業部門だが、それでも一事業部門だけでこれだけのデータ規模である。ひと口に遠隔バックアップと言っても、これを実際に形にするのは容易なことではなかった。

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導入のポイント

ビジネスを守る「最後の砦」に 富士通のデータセンターを採用

ただし、プロジェクトを進めていくうえでの明るい材料もあった。同社では以前からサーバやストレージの集約・統合を進めており、それぞれの拠点内の環境が比較的整理されていたのだ。

川崎重工業株式会社 山岡 清人氏の写真
川崎重工業株式会社 企画本部
情報企画部 基幹職
山岡 清人

同社企画本部 情報企画部 基幹職 山岡 清人氏は「以前は各拠点内のバックアップもテープベースがほとんどでしたから、いざリストアするとなると3日はかかっていました。これでは万一の際に業務へ与える影響も大きいので、ストレージやバックアップの仕組みを変える取り組みを続けていたのです」と説明する。

今回のソリューション提供を担当した富士通の副島 史広も、「川崎重工業様では常に3年先、5年先を見据えた上でICTインフラの構築に取り組まれています。今回の遠隔バックアップについても、事前に各拠点の環境の整備が進んでいたことが非常に役立ちました」と語る。

事業部ごとのニーズの違いについては、本社の情報企画部がリーダーシップを取って要件のすり合わせを実施。可能な限り迅速な復旧が求められるシステム、ある程度の時間が許容できるシステムといった具合に整理を行っていった。

また、大容量データの遠隔転送についても、ある瞬間のボリュームイメージの差分を遠隔地にコピーすることで、データ転送量の削減と高速化を図るPoint-in-Time Copy方式(注3)を採用するなど、遠隔バックアップをできるだけ効率的に行うための工夫が凝らされた。

そして、今回のプロジェクトのもうひとつのハイライトとなったのが、重要業務データの保管先となるデータセンターの選定だ。有事の際にはビジネスを守る最後の砦となるだけに、データセンターには極めて高い安全性とセキュリティが求められた。これを満たす施設として選ばれたのが、富士通のデータセンター群のうち、首都圏近郊に設置している最新センターである。

富士通株式会社 副島 史広の写真
富士通株式会社
産業ビジネス本部
エンジニアリング統括営業部
神戸産業営業部
副島 史広

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導入から構築まで

プロジェクトを2段階に分けデータバックアップの取り組みを推進

富士通のデータセンターを採用した理由について、中野氏は次のように語る。

「富士通は早くからデータセンター事業に参入しており、数多くの経験と実績を積んでいます。また、富士通では『今後のデータセンターやアウトソーシングサービスはどうあるべきか』という視点を持ち、次世代に向けた研究開発も進めています。これなら将来的にも、安心してシステムやデータを預けられるだろうと感じました」(中野氏)。

充実したバックアップ体制も、万一の際の不安を解消する大きな要因となった。山岡氏は「いざという時に、富士通グループのサポートが受けられるというのも大きなポイントでしたね。このセンターは首都圏近郊に位置していますから、人材が確保しやすい上に駆けつけ対応も容易です」と語る。

遠隔バックアップシステム構築の取り組みは、2008年の下期よりスタート。ここでは、プロジェクトを2つのフェーズに分けて実施している。

まず最初に手を付けたのは、すべての業務のインフラとなる情報系基盤と、顧客やサプライヤーとの取引に欠かせない入出金関連システムだ。これらのシステム群は早急な復旧が求められるため、RTOを2時間以内に設定。システムを稼働させるためのハードウェアも用意し、2009年下期に構築を完了した。

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導入の効果と今後の課題

シンプルな遠隔バックアップ環境を構築 災害対策コストの最適化も実現

続く第2フェーズでは、設計データや生産管理データ、技術資料など、主に生産業務に関わるデータのバックアップに取り組んだ。こちらは第1フェーズと異なり、それほど厳しいRTOは設定していない。

これは、「もし生産設備が被災した場合には、情報システムだけを早期復旧しても業務が再開できない。」との理由によるものだ。中野氏は「RTOを優先するとそれだけ費用も高額になってしまうので、復旧要件とコストのバランスを考えたうえで環境を構築しました」と説明する。

ただしRPOについては、RTOとは逆に可能な限り短く設定。これは、エンジニアが生み出す発想や技術が、同社にとって極めて貴重な知的財産であるからだ。

「1人のエンジニアが1日に10万円分の価値を生むと仮定すれば、1,000人で1億円になります。RPOが1日遅くなると、この1億円分の価値がそっくり失われてしまうのです。こうした事態は絶対に避けなければいけません」と中野氏は続ける。

具体的なバックアップの方法としては、先にも触れたPoint-in-time Copyを積極的に活用。それぞれの生産拠点の統合ストレージ装置から、遠隔センター側にダイレクトにコピーを実施している。統合ストレージがない拠点については、本社側からバックアップ用のストレージを新たに用意。

また、Point-in-time Copy機能が利用できない一部のシステムについては、バックアップソフトやシステム固有の機能を利用して遠隔コピーを行っている。

「事前に標準化を進めていたおかげで、かなりシンプルな仕組みにまとまっています。1日あたりのデータ転送量は現状で数10テラバイトに上りますが、特に問題も生じていません」と山岡氏。2011年度下期には、第2フェーズの対象となる拠点の遠隔バックアップがすべて完了する予定とのことだ。

「各拠点では災害対策用のバックアップ以外に、通常の業務用バックアップも取得されているので、翌朝までに処理が終わりきらないケースもありました。こうした場合は現状のバックアップ運用の改善なども実施。富士通でもお客様と一体となって、最適なシステムの実現に取り組みました」と副島は語る。

3月11日の東日本大震災では、遠隔センターも大きな揺れに見舞われたが、システム/データへの被害は皆無であった。今後の災害対策の取組みについて、「災害対策の取り組みに終わりはない。今後もチェックと改善を繰り返していきますので、富士通の提案とソリューションにも大いに期待しています」と中野氏は語った。

フェーズ2のリモートバックアップシステム概念図 復旧優先度 処理方式 メイン・センター 遠隔センター 1 早期復旧対策【クラスタシステム】リアルタイム処理 サーバをメイン・センターと遠隔センターに設置し、アプリケーション、またはストレージの同期機能でリアルタイムにデータを遠隔にコピー  リアルタイムコピー(WAN経由) 遠隔地にもCPUを設置し、短いダウンタイムで復旧させる  2 データ消失回避対策 【ネットワーク経由のデータコピー】バッチ処理 遠隔センターへディスクを設置し、本番システムで所得のバックアップデータを、ストレージの同期機能を用いて定期的(1日1回)に、遠隔地ストレージにデータをコピーする。本番システムのバックアップ ストレージPTC/NAS/仮想テープ バッチコピー(WAN経由) 遠隔地へはディスク装置のみ

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【川崎重工業株式会社様 概要】
所在地 東京本社
〒105-6116東京都港区浜松町2丁目4番1号 (世界貿易センタービル)
神戸本社
〒650-8680神戸市中央区東川崎町1丁目1番3号 (神戸クリスタルタワー)
代表取締役社長 長谷川 聰
設立 1896年10月15日
資本金 104,340百万円(2011年3月31日現在)
従業員数 <連結> 32,706人(2011年3月期)
<単体> 14,617人(2011年3月期)
概要 船舶、鉄道車両、航空機、宇宙機器、ジェットエンジン、各種エネルギー・環境設備、各種舶用機械、プラントエンジニアリング、鉄鋼構造物、モーターサイクル、レジャー関連機器、各種油圧機器、産業用ロボット等の製造・販売
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注記

(注1)RTO:
Recovery Time Objective。目標復旧時間。どのくらいの時間でシステムを復旧するかという目標値。
(注2)RPO:
Recovery Point Objective。目標復旧時点。どの時点のデータを復旧するかという目標値。
(注3)Point-in-Time Copy:
あらかじめバックアップしたデータとの差分だけを別の領域にコピーすることで、バックアップ処理を短時間で完了する技術。

[2011年10月25日公開]

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