- データバックアップによる事業継続のリスクマネジメント
- 超大容量データの遠隔バックアップの取り組み

輸送用機器や産業用機械、エネルギー・環境設備などの製造を手がける川崎重工業株式会社様は、万一の大規模障害や広域自然災害に備えるべく、業務データの遠隔バックアップに取り組んだ。メールやWANをはじめとする情報系基盤に加え、受注、設計、生産管理、技術情報などの重要な基幹データも、富士通の最新データセンターで確実にバックアップ。その背景には、社会インフラを支える企業としての強い社会的責任があった。

| 1 | 広域災害に対するリスク管理強化 | 本社や生産拠点のデータを遠隔地へバックアップすることで、大規模障害や広域災害時における確実なデータバックアップを実現。 | |
| 2 | 重要業務データの保管先となるデータセンターの選定 | 堅牢なファシリティを備える富士通のデータセンターのうち、津波などによる被災のおそれがなく、有事の駆け付け対応も容易な場所(首都圏近郊)にある最新センターを採用。 |
モーターサイクルやジェットスキーなどの一般向け製品に加え、航空宇宙、鉄道車両、船舶、エネルギー・環境設備、産業用機械など、多面的な事業を展開する川崎重工業株式会社様。
同社の代表取締役 常務取締役を務める高尾 光俊氏は「当社ではグループミッション・ステートメント『世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”』のもと、社会に役立つさまざまな製品の開発・生産・販売に力を注いでいます。7つの事業部門の力を合わせることで、7色の虹のようなビジネスを目指したい」と語る。

同社の最大の強みは、幅広い領域にわたって蓄積された高度な技術力だ。たとえば、近年では低環境負荷のエネルギー源として水素が注目を集めているが、同社では水素の製造から輸送用船舶、貯蔵タンク、発電用の水素ガスタービンに至るまで、すべての分野を1社でカバーし、事業化に向け研究開発に取り組んでいる。これほどの総合力を誇る企業は極めてまれだ。
その同社が、過去10数年にわたって重要課題として進めてきたのが、リスクマネジメントの取り組みである。
高尾氏は「当社は阪神淡路大震災の被災企業でもあります。当時はICTインフラも3日間にわたってダウンし、取引先様への支払いなどに支障をきたすおそれがありました。この時の経験をベースに、事業継続リスクの軽減を図るための取り組みをさまざまな分野で推進してきました」と振り返る。
さらに2007年、この取り組みにもうひとつ新たなプロジェクトが加わった。それは、本社や全国の事業所のシステムに保存されている重要業務データの遠隔バックアップである。
業務データの遠隔バックアップに着手した理由として、高尾氏はビジネスにおけるICTの重要性が飛躍的に高まっている点を挙げる。
「データが使えなくなるということは、事業そのものが停止するということを意味します。情報や資金の流れがストップするのはもちろん、工場での生産も行えなくなってしまう。有事の際には従業員や設備の安全確保が最優先ですが、重要なICT資産である業務データについても、しっかりと守る必要性を認識しました」(高尾氏)。
事業継続性の確保はどの企業にとっても重要な課題だが、同社の場合にはより強い動機があった。公共交通機関や社会基盤に関わる製品を数多く手がけるだけに、万一データが喪失してしまうようなことがあれば、社会的にも大きなインパクトが生じてしまう。
高尾氏は「社会インフラを支える事業を営む当社にとって、重要データのバックアップは会社としての責務でもあります」と力強く語る。
取り組みを進めるにあたっては、主要な生産拠点が集中する関西・東海地方から離れた場所にデータを保存することが課題となった。「阪神淡路大震災は直下型の地震でしたが、近年警戒が呼びかけられている東海・南海・東南海地震では、被害想定エリアがかなり広域に及びます。そこで、できるだけ重要拠点から離れた場所に、データを保管したいと考えました」と高尾氏は語る。
ここで白羽の矢が立ったのが、富士通が首都圏近郊に設置している最新データセンターだ。堅牢なファシリティと業界屈指のセキュリティを誇る同センターは、重要な業務データの保管場所として最適である。しかも、神戸・明石エリアからは直線距離で400キロメートル以上、名古屋・岐阜エリアからも250キロメートル以上離れており、広域災害対策にも大きな効果が期待できる。
「阪神淡路大震災で臨海地域の怖さを痛感していますので、立地が内陸部である点も安心材料でした。現地の見学も行いましたが、各種の設備も非常に充実していましたね。」と高尾氏は語る。
このデータセンターへのデータバックアップ作業は、2008年下期よりスタート。プロジェクトの第1フェーズとして、まずは従業員など人命に関わること、顧客やパートナーとの信頼に関わることを優先に、情報系基盤、安否確認、会計などのシステム/データをバックアップした。
さらに、2009年下期からは、第2フェーズとしてCADや生産管理システム、技術資料管理システムなど、主に生産業務に関わるデータのバックアップを実施。2011年度の下期中には、重要データのバックアップがほぼ完了する予定である。
7つの事業部門はそれぞれ業種・業態が異なるだけに、RTO(注1)やRPO(注2)の考え方について議論になることもあったという。しかしデータバックアップの重要性については、全事業部門が認識していたため、実施そのものについては全く異論なく合意を得ることができた。「全社的なバックアップ環境が未整備ということについては、経営会議メンバーの1人として強い危機感を抱いていました。それだけに、遠隔バックアップシステムが稼働して、ようやくひと安心という思いがしましたね」と高尾氏は語る。
今回のようなバックアップシステムは、いわば一種の保険であるだけに、なかなか投資意欲が湧かないという企業も少なくない。しかし高尾氏は、こうした考えを一蹴する。「相応のコストが掛かることは確かですが、会社が生き残っていくための投資と考えれば決して高くはない。むしろ、企業として当然やるべきことだと考えています」(高尾氏)。
ビジネスの安心・安全を確保することを実現した同社だが、今後はグローバル時代に向けた攻めのビジネスを展開していく構えだ。高尾氏は「今回のプロジェクトでは、富士通のソリューションが大いに役立ってくれました。今後はバックアップだけにとどまらず、販売、開発、生産など、当社のビジネスに直結する本業の方でも、さらにいろいろな提案を期待したいですね」と語った。

川崎重工業株式会社
本社管理部門担当
代表取締役 常務取締役
高尾 光俊氏
| 所在地 | 東京本社 〒105-6116東京都港区浜松町2丁目4番1号 (世界貿易センタービル) 神戸本社 〒650-8680神戸市中央区東川崎町1丁目1番3号 (神戸クリスタルタワー) |
|---|---|
| 代表取締役社長 | 長谷川 聰 |
| 設立 | 1896年10月15日 |
| 資本金 | 104,340百万円(2011年3月31日現在) |
| 従業員数 | <連結> 32,706人(2011年3月期) <単体> 14,617人(2011年3月期) |
| 概要 | 船舶、鉄道車両、航空機、宇宙機器、ジェットエンジン、各種エネルギー・環境設備、各種舶用機械、プラントエンジニアリング、鉄鋼構造物、モーターサイクル、レジャー関連機器、各種油圧機器、産業用ロボット等の製造・販売 |
| ホームページ | 川崎重工業株式会社 |
[2011年10月25日公開]
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