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『人を育てることは、親になることやと思います。』
山内 啓左(表具師)
世の中にはさまざまな人がいます。人生観も仕事観も人さまざまです。わからないことのほうが多い。一人ひとり顔が違うように、皆持っているものが違います。それが、人間のよさだと思います。
ノーベル賞をもらわれた方が、一人ではできなかったとおっしゃっていましたけれども、いろいろな人が寄って、また何かができるということがあると思うのです。
人というのは素晴らしい。人は生かさないけません。人は道具やない。道具だと思って使ったら、大変な当て違いやと思います。わたしら職人仲間では、昔から一寸の虫にも五分の魂といいます。一人ひとり、血の通った人間なんです。
この店は本当に釘一本からの、ゼロからの出発だったんですが、家内ともども、人が好きだったからここまで35年あまり、やってこられたんだと思います。
そして、一緒に仕事をしている子らにも、人が好きで、人様に喜んでもらいたいと思う、そんな子に育ってほしいと思うとります。やはり人の役に立つ、そういう一ページを描くのが人生でもあるし、その人の歴史かもしれないと思いますね。
完
著者紹介
山内 啓左(やまうち けいすけ)
1936年生。岡墨光堂の岡岩太郎のもとで修行したのち、1967年、墨申堂を設立し、独立。文化財の修復を手がける全国7工房の一つとして知られ、常滑市・中之坊寺の「浬槃図」など重要文化財の修復を数多く手がける。
出典:富士通マネジメントレビューNo.218
