携帯電話などの移動通信システムには、通信速度の高速化、大容量化が求められています。また、基地局を設置し易くするために低消費電力化も重要です。このためには、高周波で動作し、信号の歪み難い、かつ効率よく電力を電波に変換できるトランジスタが必要です。窒化ガリウムを使ったHEMTはこの用途に最適なトランジスタです。
・従来構造
電子が生まれる層に窒化アルミニウムガリウムを使い、電子が走る層には窒化ガリウムを使います。
しかし、窒化アルミニウムガリウムは表面が不安定なため、ゲート電極に電圧をかけた時、ゲート電極の下へ電流が漏れるなどの現象が起こっていました。そのため、効率が悪いトランジスタ(ドレイン電極で得られる0と1の信号の変化が小さい)という問題がありました。

・開発した構造
電子が生まれる層に窒化アルミニウムガリウムを使い、電子が走る層には窒化ガリウムを使うのは従来品と同じですが、窒化アルミニウムガリウムとゲート電極の間に窒化ガリウムを追加しています。すると、ゲート電極下に電流が漏れるのを防ぐバリアのような役目をしてくれるため、効率良いトランジスタ(ドレイン電極で得られる0と1の信号の変化が大きい)を実現しました。

・高電流、高電圧でも壊れにくい
窒化ガリウムや炭化けい素の破壊電界値はシリコンの約10倍で、高電圧でも壊れにくい特長があります。また、走行電子濃度も10倍でたくさんの電流が流れます。

・効率が良い
材料の効率の良さは、主に、電子の移動度と飽和電子速度で判断します。
飽和電子速度以上の電圧量になると電子がいろいろな障害物にぶつかるような現象がおこり、電子の動きが悪くなります。飽和電子速度が大きいほうがこの現象が起きにくく、より高い電圧をかけることができ、効率良く動作することができます。
このため、飽和電子速度の大きな窒化ガリウムを使用しています。
例えて言うと、電子の移動度は加速、飽和電子速度は最高速度のようなイメージになります。

・熱伝導に優れている
熱伝導率は窒化ガリウムよりも炭化けい素のほうが更に3倍以上も上回っているため、トランジスタを動かしたときに出る熱を放熱させる構造になっています。
