富士通研究所

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  5. 磁気ディスク装置 小話

小話

浮上量の話

磁気ディスクとヘッドの間の距離は0.01ミクロンです。煙草の煙は直径1から3ミクロン、指紋の断面は3から5ミクロン、髪の毛の断面は80から120ミクロンなので、0.01ミクロンが非常に小さいことがわかります

ちょっとした歴史

1898年に磁気記録技術は誕生してから100周年になりました。最初の磁気記録は、磁性体の磁化状態を制御することによる情報記憶技術として、1898年にV.Poulsen(デンマーク)によって発明されました。磁気録音機として具現化されたこの技術は、1900年のパリ万国博に出品され、「最近の発明のなかで最も興味あるもの」として賞賛されました。この技術が実用化されるのは、1921年L.De Forest(米国)の真空管による増幅器の発明、さらにドイツでリング型磁気ヘッドと微粉末塗布型テープが開発された1930年代のことです。
さて、世界最初の磁気ディスク装置は、これらの技術的進歩を基に、1956年にIBM社によって発明されました。直径24インチのディスク50枚で構成された大がかりなものでしたが、記憶容量はわずか5Mバイトにすぎませんでした。現在の3.5インチのフロッピィディスクのたった4枚弱に納まってしまう容量です。その後、現在までの40年余りの間に、磁気ディスク装置の面記録密度は約100万倍にも達しています。

研究員談 -ハードディスクドライブの要素技術

磁気ディスク装置を一言で説明すると、回転するディスクの上をヘッドが浮上しながら、磁気的に信号を読み書きする装置です。このような装置構成のため、駆動部が重要な役割を果たしています。その駆動部の開発に必要なのは、(1)ディスク上のヘッドの位置決め精度向上に関わるメカ・サーボ技術、(2)ディスク上をヘッドが浮上するときの摩擦や磨耗現象を扱うトライボロジー技術といった機械工学に関連する要素技術です。
一般に、装置の信頼性を向上させるためには、駆動部を如何に少なくしていくかという検討がなされています。ところが、磁気ディスク装置の場合、駆動部そのものが装置の主要部であるため、高い信頼性を実現するにはメカに関わる多くの困難な課題を解決することが必要不可欠となります。このことは、メモリの仲間である半導体が、機械的な駆動部を全く持たないのと大きく異なる点であり、磁気ディスク装置の特異性とも言えると思います。
もちろん、実際にはこの他にも多岐にわたる要素技術が駆使されています。上記以外の主なものだけでも、(1)ヘッド、媒体に関する磁性・材料技術、(2)ナノメータオーダーの寸法精度を実現するための加工技術などがあげられます。これらを組み合わせたハイテクの総合技術の産物が磁気ディスクなのです。
現在、磁気ディスク装置について、研究開発から製造販売まで行っているのは、国内では、3社です。数年前まではこの他に数社ありましたが、現在では完全に撤退したり、ヘッドのみ、あるいは媒体のみの供給に様変わりしています。業界のこのような動きは、1年間に2倍以上というすさまじい記録密度の向上を実現するために、広範囲な学問分野に関わる要素技術を継続して開発していかなければならないという磁気ディスク装置の厳しい世界を象徴しているように思われます。
・・・ストレージシステム研究所 磁気ディスク先行研究部