「見る・聞く」技術

視線検出技術

パソコンを操作するときはマウス?キーボード?タッチパッド?そこにあなたの目の動き(視線)を加えませんか。パソコンの操作を自動的に補助してくれます。

視線検出技術って何ができるの?

視線検出技術って聞いたことありますか?

ユーザーがどこを見ているか、見つけ出す技術です。
この技術をパソコン操作に応用すると、パソコンの画面内のどのあたりをユーザーが見つめているのかをキャッチして、自動的に操作してくれます。

どこで使えるのかな

「視線アシスト機能」が搭載されている富士通パソコンFMV(ESPRIMO FH98/JD)で視線検出技術を使うことができます。(2013年4月現在)

  1. 地図アプリでスクロール
  2. チャームの表示
    (チャームとは、Windows 8の画面右端に表示されるツールバーのことです。Windows 8で新しく追加された機能のひとつです)
  3. 写真閲覧アプリでの写真の切り替え表示

具体的にどんな補助をしてくれるの?

私たちは普段、何度もマウス操作をしています。この技術は、画面のある位置を見るだけで、ユーザーが次にしたい操作を実行してくれます。これによりユーザーの負担が軽減されます。

基本原理

視線検出技術は、ユーザーがどこを見ているのか判断するために、目の動きを検出します。
その目の動きは、目の「動かない部分(基準点)」と「動く部分(動点)」を見つけることからはじめます。 基準点と動点を見つけたら、基準点に対する動点の位置に基づいて、視線を検出します。

基準点、動点の選び方の違いにより、様々な方法があります。その中でも代表的な2種類を説明します。

A. 基準点を目頭、動点を虹彩にして位置関係を使う方法
B. 基準点を角膜反射、動点を瞳孔にして位置関係を使う方法

A. 基準点を「目頭」、動点を「虹彩」にして位置関係を使う方法

普段、私たちが日常で使うカメラ(可視光を撮影するカメラ)を用意して、私たちの目を写します。基準点を、目頭にします。動点を、虹彩にします。目頭に対する虹彩の位置に基づいて、視線を検出しています。(例えば、左目の虹彩が目頭から離れていれば、ユーザーは左側を見ています。左目の目頭と虹彩が近ければ、ユーザーは右側を見ています)

B. 基準点を「角膜反射」、動点を「瞳孔」にして位置関係を使う方法

赤外線LEDでユーザーの顔を照らして、赤外線を撮影することができるカメラで私たちの目を写します。赤外線LEDを照らしてできた反射光の角膜上の位置(角膜反射)を基準点とします。角膜反射の位置に対する瞳孔の位置に基づいて、視線を検出しています。(例えば、左目の角膜反射よりも瞳孔が目じり側にあれば、ユーザーは左側を見ています。角膜反射よりも瞳孔が目頭側にあれば、ユーザーは右側を見ています)

メリット、デメリット

・「A」
メリットは、可視カメラのみで実現できるので、値段が安いことです。
デメリットは、視線精度がでにくいことです。(例えば、基準点の目頭は、個人差や表情の変化により、安定して正確に検出するのはむずかしい場合があります)

・「B」
メリットは、視線精度が良いことです。基準点とする角膜反射は、画像処理で通常は正確に検出しやすいためです。
デメリットは、赤外線カメラと赤外線LEDを使うので値段が高くなることです。

富士通研究所は、「B」の角膜反射法のデメリットである「コストが高くなる」ことを改善するために、小型で、値段の安い赤外線カメラと赤外線LEDを使った場合に課題となる不鮮明な画像から角膜反射と瞳孔を検出する画像処理技術を開発しました。
これにより、視線を検出するために必要なものをパソコンに内蔵することができました。詳細を次の項目で紹介します。

不鮮明な画像から視線を検出する方法

小型で値段の安い赤外線カメラと赤外線LEDでは、ユーザーを撮影した画像が暗く不鮮明になる時もあります。そんな時でもしっかり視線を検出できる方法を開発しました。

暗くて不鮮明な画像でも、しっかり視線検出

  1. 赤外線LEDで顔を照らして、赤外線カメラで撮影します。
  2. 画像の中から、目の中にある白い丸い形をしたものを、角膜反射の候補として検出します。黒い丸い形をしたものを、瞳孔の候補として検出します。
    この時、明確に丸い形でなくても、少しでも可能性があるものを全て候補として、検出します。
  3. 候補の中から形や位置で、明らかに違うものを削除し、角膜反射と瞳孔の位置関係や過去のデータから、候補を絞り込みます。
  4. 角膜反射と瞳孔の候補の中で、可能性がもっとも高いものを選択し、ユーザーの視線の算出に用います。

視線検出技術を身近に

今まで視線検出技術を利用しようとすると、理想的な画像を得るために大きい装置や値段の高い装置が必要でした。
今回、富士通研究所では手軽に視線検出技術を使っていただけるように、パソコンの中に必要なものを全て収めました。そのため、パソコンの中に組み込み可能な、小型で値段の安い赤外線カメラと赤外線LEDを使用しています。それらの機器を使うと、どうしても不鮮明な画像が撮影されやすくなります。そこで、不鮮明な画像でも、角膜反射と瞳孔をしっかり検出する技術を開発しました。

<メガネをかけている場合でも、視線検出できるの?>
答えはYESです!
メガネの場合、メガネに赤外線LEDの光が反射(メガネ反射)しますので、視線検出画像にしっかりと写ってしまいます。しかし、そのメガネ反射は視線と関係がないため、候補からはずす必要があります。
それでは角膜反射とメガネ反射をどうやって見分けているのでしょうか 。実は、画像に写った白い丸の場所や大きさなどで判断できるのです。

その他の応用

  • パソコン操作を補助する障がい者向け支援機器
  • 各種分析の手段(ウェブデザインの評価、ネットショップの商品の配置分析など)

小話

やさしい技術講座の担当者となってラッキーと思う瞬間

今回の「視線検出技術」は、色々な展示会に出展し、ご紹介をしています。各展示会場では、皆様に体験していただけるように、「体験コーナー」も設置しています。
筆者も色々な情報を得るために展示会に出かけるのですが、せっかくなら体験させてもらおうと思い、体験コーナーに行きました。しかし・・・。
あまりにも体験を待つ方々の列が長いので、社内の人間で更に待ち時間を長くさせてしまうのもお客様に申し訳ないと思い、体験を断念して帰りました。
数日後、「視線検出技術」をやさしい技術講座でご紹介することが決まり、早速取材にでかけると、そこに体験デモ一式がおいてありました。執筆関係者の最初の第一声が「オオオオ~!」でした。
技術をご紹介するためには、実物を体験するのが一番なので、思う存分試させていただきました。技術をご紹介する講座を担当していると、先端技術にじっくりと触れることができるので、思わず「ラッキ~」とつぶやく瞬間でした。


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