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医療インシデントレポートシステム「SafeProducer」
導入事例

厚労省・インシデント情報収集プログラム協力病院 広島赤十字・原爆病院

安全対策が病院の評価を大きく左右する時代

患者自身が病院の安全体制を評価する時代において、これらのリスクマネジメントには何が求められるのだろうか。厚生労働省が主導するインシデント情報収集プログラムの協力病院として、積極的に安全管理体制を進めてきた広島赤十字・原爆病院だが、同病院の医療安全推進室でリスクマネージャーを務めるお二方に、これからの医療安全対策について伺ってみた。


1. 人々が安心できる安全な医療を提供

人々が安心できる安全な医療を提供します
石田照佳 副院長

ゼネラルリスクマネージャー(副院長) 石田照佳

医療の現場では、医療従事者の不注意が単独あるいは重複して、医療上望ましくない事態を引き起こす場合があります。当然のことながら、医療従事者には不断の努力が求められます。しかし、人間には錯覚が生じ、注意力には限界があることも事実です。その「人は間違うもの」という現実を前提に、病院の全職員が一体となって患者さんの安全を最優先に考え、その実現を目指す態度や考え方、そしてそれを可能にする院内のシステムの構築が重要だと私たちは考えています。

当院ではインシデント・アクシデント情報を収集して、業務の流れを再点検し、個人の間違いが重大な事故に結びつかないようにするフェイルセーフの構築を目指しています。インシデント・アクシデント情報については「職員リスク研修会」に還元し、医療安全に関する知識や技術を学び、業務に取り込んでいます。

先般、職員から医療安全に関する標語を募集し、「育てよう リスクをとらえる 感受性」が最優秀標語となりましたが、私たちは、さまざまな機会を通じて、職員どうしが普段の業務を見つめ直し、医療安全について話し合うなどして、互いの意識の啓発に努めています。


2. 安全対策の体制

大崎和子さん写真

まずは、広島赤十字・原爆病院における安全対策の体制について、概略をお伺いできますでしょうか。

大崎:

当院では、厚生労働省による安全管理体制の指導強化を受け、平成16年度に病院長直属の組織として「医療安全推進室」を設置しました。そこで院内感染や医療安全にかかわる情報収集と、安全対策を一本化して行っています。転倒転落事故を含めると、多いときで月に200件以上のインシデントが発生しますから、いかに効率よくインシデントを処理し、危険の芽を摘むかが医療安全推進室の役割だといえます。


3. システムを電子化にしたことによる安全対策のメリット


2007年の7月にインシデント報告システムの電子化を行われたとのことですが、安全対策においてどのようなメリットがありましたか?

電子化により分析や対応がスピーディに
山光康子さん写真

山光:

当院は日本医療機能評価機構や赤十字本社の事例収集事業に協力しています。従来はインシデントが紙ベースで運用されていたため、入力や集計がすべて手作業となっていましたが、電子化により作業の手間が大幅に省かれ、分析や対応のための時間を割けるようになった点が大きいですね。

また、以前は各部門の医療安全に関する責任者であるリスクマネージャーを経由して医療安全推進室にレポートが届いていたため、職域ごとに検討や対策が行われてから、ということも珍しくありませんでした。つまり、ある部署で発生したインシデントが病院全体の問題として把握されるまでに、最低でも1週間、場合によっては1か月程度かかる事例もあったということです。もちろん、インシデントが発生した現場での検討や対策は重要ですが、現場では「緊急性がない」と判断された問題でも、実際には早い対応が望ましいケースがあります。

たとえば以前、蒸しタオルを保管するための器械で、家族の方が軽いやけどをしたという報告があったのですが、この種の事故は他の部署でも起こりうるものです。発生から1か月後に報告が上がってくるようでは、対策の機を失う可能性があります。インシデント報告の電子化により、問題の発見から対策までのサイクルが確実に短縮された点は大きいですね。

複数の職域からの情報収集で客観的に分析
大崎:

それと、複数のインシデントと突き合わせてみることで、事故の原因がより明確になるケースがありますから、大量のデータを集計・分析できるようになったことも電子化のメリットといえますね。たとえば、シリンジポンプ(持続注射のための機器)のインシデントが発生した例では、当事者である看護師から「機器の故障ではないか」との報告に対し、装置の保守を担当する臨床工学技士からは「現場での操作方法に問題があるのでは?」という報告がありました。このとき看護師の対応は、機器の交換だったのですが、単純にシリンジポンプを交換するだけでは、問題解決になりません。

そこで重要なのが、なるべく多くの職域からインシデント報告を収集し、客観的な情報を抽出するということなんです。そのため当院では、1つのインシデント事例に対して何件のインシデント報告を提出してもよいというルールにしています。

4. 集約されたインシデント報告のフィードバック方法


医療安全推進室に集約されたインシデント報告は、どのようにフィードバックされているのでしょうか?

写真

山光:

まず、インシデント報告があがったら、調査が必要な場合は、どのような状況で起きたのか、現場に確認を取るようにしています。多いときで1日に7〜8件のインシデントが発生する計算になるため、優先順位をつけて対処の仕方を決めることが重要ですね。緊急性の高い問題を除き、リスクマネージメントの作業部会等で各インシデントの報告や、要因・解決方法の検討を行い、承認や決裁が必要な事例に関しては、決定権を持つ「リスクマネージメント委員会」への提言を行い、さらに検討を重ねます。

看護師からの報告が圧倒的に多いのは、他施設と同じです。看護部には、看護部リスクマネージメント委員会と各部署の医療安全のコアとなる看護師で構成する、リスクマネージメント担当者会議があります。リスクマネージメント委員会と連携しながら問題解決にあたる体制となっています。転倒・転落事故や、患者間違いといったインシデントに関しては、看護部の担当者会議が対策の中心になることが多いですね。

安全対策として決定した事項などは、院内LANの掲示板システムなどを利用して速やかに流すのはもちろん、看護部の担当者会議や研修会などを通じて現場に浸透させるようにしています。ネットワーク上の掲示板だけでは、情報を見る側の主体性に依存するところもあるので、それ以外にもあらゆる機会を通じて告知していくことが重要だと考えています。

大崎:

また、医師の場合は、看護師の報告するインシデントとは、問題の性質が異なりますので、報告数が少ないのが現状です。

広島赤十字・原爆病院の安全管理体制
新人の勉強会でも活用するケース
山光:

インシデント報告の電子化により、特定の事例のみを抜き出すことが簡単になりましたから、新人看護師が起こしやすいインシデントをまとめ、新人の勉強会などで活用されるといったケースも増えています。また、それぞれの部署ごとに部署内のデータを検索したり集計することができますから、たとえば「自分たちの担当する病棟で投薬ミスが多い」などの傾向を把握するうえで役に立ちます。これまでのインシデント報告システムでは、レポートを提出したらそれで終わりでしたが、それぞれの職域で自らの取り組みとして安全対策に活用できるだけでなく、安全意識を高めるうえでも非常に効果があるといえます。

5. 電子化によるインシデント報告の効果


電子化により、手軽にインシデント報告を行えるという効果もあるのでしょうか?

大崎:

電子化による匿名性の確保により、インシデントレポートを「出しやすくなった」という側面はあると思います。従来は、専用の報告書をプリントアウトする必要があるなど手間もかかりましたが、電子カルテを運用しているパソコンからそのまま入力できるようになったのも大きいですね。電子化による混乱を避けるため、従来のインシデント報告書と書式を統一させるなどの工夫もしていますが、今のところ操作面や機能面でのクレームは上がっていません。

6. これからの医療安全に対する取り組み


それでは最後に、これからの医療安全に対する取り組みについてお聞かせください。

山光:

医療安全に関するさまざまな問題が注目されているという背景もあり、これからの時代は、患者さんが病院の安全を評価して決めることが当たり前になってくるのではないでしょうか。患者さんの高年齢化が進んでいる状況もあり、安全対策はますます難しくなっていますが、インシデント報告システムなどの整備により、リスクを確実に減少させる努力を続けていきたいと考えています。


ありがとうございました。

広島赤十字・原爆病院様 プロフィール

広島赤十字・原爆病院

日本赤十字社の広島赤十字病院と、原爆医療を専門とする原爆病院が昭和63年に統合して誕生。600以上の病床を備えた地域医療の中心として、活動を行っている。


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