【第六回】 組込み機器でバッテリーを長持ちさせる
Linuxベースの組込み機器で、高度な省電力機能を実現するには?
システムの省電力化が稼働時間の延長につながる
バッテリー搭載機器の稼働時間を長くするためには、システム稼働時の電力消費を抑えることが重要です。そのため常にシステムの稼働状況の監視を行い、使用していないデバイスの供給電力を下げたり、一定時間使用しない場合には電源そのものをオフにするなどの工夫が必要となります。
ノートPCなどではこれらの仕組みが利用されており、ACPI/BIOSによる省電力機能の実装が主流となっています。パソコン向けの省電力制御インターフェース規格であるACPIは、ACPI(注1)に対応したOS、デバイスにより省電力機能を実現するもので、WindowsやLinuxといったPCで動作する代表的なOSに実装されています。たとえばCPUのアイドル時に動作クロックを下げたり、液晶画面やハードディスクの電源をBIOSやOSで細かく管理するといった技術も、ACPIによるものです。

組込み機器の省電力化は、機器の軽量化や低コスト化とも関連してくる問題
組込み機器では、OSレベルで省電力制御ドライバを実装する必要が
組込み機器のソフトウェア開発では、既存のPC向けのソフトウェアを流用し、対象のアーキテクチャーに合わせてカスタマイズすることが一般的ですが、組込み機器に搭載するデバイスのほとんどがACPI非対応となっており、PC向けの実装を流用できません。そのため組込み機器で省電力機能を実現するには、PCとは異なるアプローチによる、OSレベルでの設計と実装が欠かせないのです。
Linuxを利用した組込み機器に省電力機能を搭載するには、OSに「省電力制御ドライバ」を実装させ、機器固有の「省電力制御アプリケーション」によりコントロールする方法が主流です。つまり、省電力制御アプリケーションがシステムの動作状況やデバイスの使用状況を監視し、これらの情報に基づいて省電力制御ドライバインターフェースが、CPU周波数やデバイスの消費電力を設定するわけです。

ACPIなど既存の省電力規格を利用できない組込み機器では、OSレベルでの実装が求められる

Linuxベースの組込み機器では、省電力制御ドライバと省電力制御アプリケーションを組み合わせて利用する手法が採られる
オープンソースドライバの活用
LinuxにはPC向けの省電力制御ドライバとして、ACPIドライバがカーネルソースに標準で搭載されていますが、組込み機器向けのドライバは含まれていません。そのため組込み機器のソフトウェア開発では、Linuxカーネルソースとは別に省電力制御ドライバを入手するか、独自開発する必要があります。
組込み機器向けに提供されているオープンソースの省電力制御ドライバでは、CELF(CE Linux フォーラム)の策定するDPM(注2)が代表的なものでしょう。DPMはMontaVista社およびIBM社により提案された、アプリケーションが動的に省電力を行うためのフレームワークで、CPU周波数や電圧の変更、周辺機器の電力供給の制御などに対応しています。ドライバ、ユーティリティのソースコードがすべてGPL(注3)で公開されているため、アーキテクチャーに依存する部分をカスタマイズすれば、ターゲット機器への実装が可能となるのも注目したいポイントです。

DPMの活用により、より簡単に省電力機能の実装を行える
アプリケーション側から省電力ポリシーを制御できる
DPMの特徴は、省電力ポリシーに基づいた制御を実行できることにあります。DPMの省電力ポリシーは複数の設定が可能で、アプリケーションとDPMが連携して、システムの状態に応じて最適なポリシーを選択することで省電力制御を行うことができます。システムにとって、クリティカルなアプリケーションが動的にポリシーを設定できるなど、OSとアプリケーションが連携した省電力制御を行えるのもDPMのメリットといえるでしょう。
省電力機能を実装すれば、バッテリーによる稼働時間を長くできるだけでなく、機器の発熱を抑止することが可能となります。バッテリーによる稼働時間が長くなることで、充電回数が少なくなるなど、エコロジー面への貢献も期待できるでしょう。

システムの状況に合わせ、省電力ポリシーを切り替えられる点がDPMの特徴といえる
【注釈】
| 注1 | ACPI: | Advanced Configuration and Power Interface 。マイクロソフトやインテルが中心となって策定された省電力規格 |
| 注2 | DPM: | Dynamic Power Management。組込みLinuxをターゲットとした省電力規格 |
| 注3 | GPL: | General Public License 。フリーソフトウェアのライセンス形態の一種 |
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ターゲットの携帯端末
- CPU:PXA-27x
- Linux 2.6.17 ベース
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- アプリケーション動作状況の監視
(動作状況に応じてCPU周波数、搭載デバイスの電源制御を実施)
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バッテリー稼働時間の10時間延長を達成 |
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