Make the World Better Place---世の中をよりよい方向に変えるために |
|
|
シリコンバレーのビジョナリストたちの金言を集めた『ウェブ時代の5つの定理』(梅田望夫著)の表紙で紹介されている“Make the World Better Place”---「世の中をよりよい方向に変える」は、シリコンバレーの起業家の意気込みをうまく表したコンセプトと言えるものでしょう。大言壮語と言われようと、“ぶれない思想”を持ちコンセプトとして示すことは、多くの組織あるいは個人で何かを創造していくために大切であるはずです。本レポートではコンセプトを体現しながら、新たなビジネスを創造する取り組みを紹介します。 |
|
最近、新たな製品やサービスを提供するうえで大切なのは“ユーザー・エクスペリエンス”を向上させることであるとよく聞かれます。これは一言で説明するには難しく、コンセプトとして標榜すれば誤解を招くおそれもありますが、「お客様を喜ばせ、楽しませる」---として捉えれば至極当たり前のことだと思われます。日本でも今年7月に発売されるiPhoneは、“ユーザー・エクスペリエンス”というコンセプトを体現した製品と言えるでしょう。新型iPhoneは「3Gになって早くなる」とか、「薄くて持ちやすくなる」とか、そうした携帯電話のテクノロジの強化だけが話題を呼んでいるのではありません。むしろ、デベロッパーにオープンであることから「どんなサービスが生まれるのだろうか」というイマジネーションを掻き立てるとともに、企業向け機能をリリースすることから「仕事でも楽しく使える」という期待を抱かせてくれる---言い換えれば、発売前から「早く見たい」という喜びをユーザーに与えていることが評価されているのだと思います。「iPhoneが好きなのは、子供の頃にディズニーランドへ行くのが楽しみだったのと同じ理由」という声は素直に頷けるものです。
Web2.0の特徴のひとつである“参加型”というキーワードは、Gen Yの行動様式を起点に理解するとわかりやすいでしょう。マーケティングをはじめとする企業活動において“集合知”を利用する動きが見られますが、これらはGen Yの自己表現を重視した「パブリッシング(草の根的行動)から生まれたコンテンツ利用」とも言い換えることができるかもしれません。YouTubeやFlickrなど最近のシリコンバレーにおける成功例の多くは、Gen Yを“消費者”と見立てるよりも“企業への協力者”として彼らの支持を取り付けていったわけです。
「ユーザー・イノベーションを実践しながらビジネスを創造する」というのも最近シリコンバレーでよく聞かれる 話です。これも「お客様やパートナー様の声を聞く」という意味では、ビジネスを遂行する企業にとって当然持つべきコンセプトと言えるはずです。しかし、実際、コモディティ化の進んだIT分野では、多くのお客様の要望を一つひとつ公平に取り入れてイノベーションを現実化することは非常に難しく、時間やコストを要するものと考えられてきました。
新たなウェブ時代はユーザー・イノベーションを体現する機会を創り出しています。例えば、DellのIdea Storm(http://www.ideastorm.com/)は、同社の製品やサービスに対するユーザのアイディアが投稿でき、投稿されたアイディアに対してユーザーが意見することができる掲示板のようなサイトです。DellはIdea Stormを通じて、1日数百件のユーザーとの対話を実現し、その成果が製品のイノベーションに大きな影響を与えているそうです。IdeaStormは、Idea BoardというSalesforce.comの提供するサービスのカスタマイズ版を利用したものです。一方、Salesforce.comは自らIdea Exchangeというサイトを立ち上げており、ユーザーのみならず、協業するパートーナー や自社の従業員の声を聞き、サービスの改善に努めているそうです。こうした取り組みを実践する企業はユーザー・イノベーションを体現し、新たな製品やサービスを提供していると言えるのでしょう。
米国企業、とりわけシリコンバレーの企業は、通常の感覚からすると恥ずかしく聞こえるコンセプトを迷うことなく掲げることがよくあります。例えば、Googleの「世の中の情報を整理し尽くす」、Amazonの「地球最大のセレクション(品揃え)」、あるいはSalesforce.comは社名そのものが自分たちの存在を示していると言えるでしょう。
こうして見ると、新しいものを創造するためには、その目的と意義を見出すために多くと共有できるコンセプトを持つことが重要だとわかります。お客様との関係から機微を感じ取り、お客様と“共感できる”能力を養うこと---それがこれからのイノベーションに求められるものではないでしょうか?“Make the World Better Place”のために我々は何ができるのでしょうか?まずはそれを自らの立場に照らして考えることが新たな創造の一歩になるのでしょう。
| 川合 康太 | |
![]() |
米国富士通研究所(Fujitsu Laboratories of America, Inc)に在籍中。 |
| 所在地:1240 E. Arques Ave. Sunnyvale CA 94085 (富士通シリコンバレーキャンパス) | |
本文中に記載の肩書きや数値、固有名詞などは掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。