富士通総研

HOUSEHOLD SERIES No.4

要旨

個人消費の長期変動と構造変化  —— 所得・価格弾性値の推定を中心に ——

主任研究員 長島 直樹

今後の日本経済の成長持続性は、個人消費が中長期的に堅調に拡大していくか否かに依存する部分が大きい。一方、財政状況の悪化から、増税論議が活発化してきた。所得税増税(定率減税廃止)・消費税増税(税率引き上げ)が消費をどの程度抑制するかは、所得効果、価格効果如何にかかっている。本稿では消費全体と項目別の消費支出に関して、各種の弾性値を推定し、税制へのインプリケーションを考察した。その結果以下のことがわかった。

1. 1989年秋を境に、所得と一般物価のトレンドが上昇から下降に変化しており、それに伴って、所得・価格弾性値も大幅に変化するという構造変化が起こっている。所得効果、価格効果(一般物価効果)とも、下降期は上昇期と比べて大きくなっている。この意味で、消費は所得や物価の上昇よりも下落に対して大きく反応する傾向がある。

2. 名目所得1%の減少と一般物価1%の上昇は同じ効果ではなく、その意味で貨幣錯覚が存在している。消費に対する影響は所得が1%減少するとき、物価が1%上昇するときよりも大きい。

3. 消費項目別に見ると、所得効果は所得上昇期には小さかった衣食住関連が、1998年以降大幅に上昇し、教養娯楽などを上回っている。所得減少に対して、家計はこうした日常的、基礎的な消費分野の消費を切り詰めることによって対処したと推測される。

貯蓄率低下の背景  -年齢・所得階層別の分析から-

主任研究員 新堂 精士

所得階層別かつ年齢階層別に貯蓄率動向を見ることで以下のような結論をえた。近年の貯蓄率の低下は全ての世帯で同じように生じているものではなく、中・低所得者層の50代・60代と60代以上の無職世帯で生じている現象である。これらの原因は、近年の可処分所得減少のなかで、消費をそれほどには減少させなかったことにある。60代以上の無職世帯について考えると、貯蓄率の動向よりは、貯蓄を取り崩す主体である高齢無職世帯の世帯全体に占める割合が増加していることのほうが問題視されるべきである。

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