No.272 : 住基ネット / カードの利用促進にむけて
上席主任研究員 前川 徹
2006年8月
要旨
行政の電子化は、行政事務の効率化や適正化を通じて国民負担の軽減と公平化を実現し、住民サービスを向上させる重要な手段であり、2002年8月にサービスを開始した住基ネットは、その行政の電子化を支える重要なインフラである。 しかし、多くの国民は、個人情報の漏洩や国家による国民の監視を懸念し、住基ネットは不要だと考えている。それは、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)がどのように利用され、行政事務の効率化や住民サービスの向上にどのくらい役立っているのかが充分に説明されていないからではないだろうか。 そこで、住基ネットのコストベネフィット(経済効果)を、フェーズI(2005年度)とフェーズII(数年後)に分けて試算した。この結果、フェーズIで年間183億円、フェーズIIで917億円の経済効果があることが分かった。
住基ネットの構築費用は391億円であり、2005年度の運用費は176億円である。つまり現状で運用費に見合うベネフィットは得られている計算になる。また、数年後には初期投資を含めても、投資以上の効果が得られることが検証できた。ただし、この試算では、行政事務の効率化によって減少する時間をすべて金額に換算しており、住基ネットの効果を現実のものとするには、国や地方公共団体における職員の削減の実現が必要である。 住基ネットから得られる経済効果をより大きくするためには、現行の枠組みの中での利用を拡大すると同時に、住所等の変更手続きのワンストップ化、住基ネットの国税や地方税、国民年金保険料の徴収への活用、住基ネットが扱う情報の拡充、住基カードの多目的利用の促進が必要であり、住基カードの無料配布や住基ネットをベースに構築された公的個人認証サービスの民間開放を行うことが望まれる。
(注)このレポートに含まれる「住基ネットのコストベネフィット試算」は、情報化推進国民会議の「住基ネットシステムの国民的な理解を求めるための専門部会」において実施したものである。
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