No.256 : ポスト京都フレームワークに関する定量的評価
上級研究員 濱崎 博
2006年4月
要旨
2005年2月16日、ロシアの京都議定書批准を受け、京都議定書が正式に発効した。議定書発効により、2013年以降の枠組みに関してさまざまな提言も出始めているが、その多くは定量的な把握に乏しいもので、定量的評価を基にした提言の必要性が高まっている。以上の問題意識より、本研究では代表的なポスト京都フレームワークである、マルチステージ・アプローチと技術スタンダード・アプローチを取り上げ、動学CGEモデルを用いて経済及び環境の両側面より評価を行った。今回行ったシミュレーション結果によると、マルチステージ・アプローチは、十分な温室効果ガス削減にはならない。絶対量での削減目標導入に異を唱える米国、中国といった排出大国の参加が期待できない。仮にこれらの国の参加なしでの導入を行った際、日本、カナダ、EUといった京都議定書批准国・地域に対して京都議定書以上の削減義務を負わせることになる。環境の側面からは、非常に狭い範囲の国・地域が削減対象になる。また削減目標を持たない国へのカーボンリーケージが生じるため、気候安定化に必要な十分な排出削減が行われない。経済的側面からは、削減目標を持つ国・地域に非常に高い負担を求めることになり、これらの国・地域経済の停滞を招く。
一方、技術スタンダード・アプローチに関しては、今回のシミュレーションでは中国の鉄鋼、化学・ゴム・プラスティックが現在の日本のエネルギー効率を達成するという条件でのシミュレーションではあったが、マルチステージ・アプローチよりも良好な結果を得られた。環境側面からは、カーボンリーケージが大幅に抑えられ、絶対量でもマルチステージ・アプローチよりも多い削減量が達成可能である。さらに、対象となる産業・国を拡大することにより、より一層の削減が期待できる。また、経済面においても、我が国への経済影響もマルチステージ・アプローチと比較しても軽微なものとなる。技術スタンダード対象産業・国の拡大により、気候安定化と持続的経済成長の両立が可能性となる。
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