No.175 : 電子商取引(EC)に関する10ヶ国の比較と特徴
主任研究員 浜屋 敏
2003年9月
要旨
- 本稿では、The Center for Research on Information Technology and Organizations(CRITO:「ITと組織に関する研究センター」)が行なった電子商取引(EC)の世界的な広がりに関する調査結果を分析している。この調査では、2002年2月から4月にかけて、世界10ヶ国(ブラジル、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、日本、メキシコ、シンガポール、台湾、アメリカ)において、同じ調査票を用いて、企業の担当者に対してECの実施状況について電話調査を実施した。各国におけるECの実施状況を把握するだけでなく、国際比較を行なうことで日本企業の特徴をより正確に理解することができた。
- 調査対象となった事業所における、電子メールや公開ウェブサイト、イントラネット、エクストラネットなど、ECのインフラとなるITの導入について回答を集計してみると、電子メールについてはほとんどの国でほぼ100%の企業が導入しており、世界的に大きな差はないことがわかった。技術の導入について日本の企業が遅れているということはなく、イントラネットなどわが国の企業の方が米国企業よりも導入比率が高いものもある。10ヶ国全体で比較してみても、わが国の企業におけるEC技術の導入は進んでいる方だと言ってもよい。
- 日本企業におけるインターネットの利用状況を業務別に分析してみると、たとえば調達の分野では、EDIのように事前に特定された取引先とのデータ交換のためにインターネットを利用する場合は多いが、オープンなネットワークであるインターネットの特性を生かして新しい調達先を開拓しようという傾向は弱い。わが国の企業においても、たとえばオフィス用品のような間接材については、従来からの取引関係にこだわらずに、インターネットで新しい取引先を開拓してコストを削減することを、もう少し真剣に考える必要があるのではないだろうか。
- 日本企業のECの特徴は、阻害要因やインパクトに関する回答によく表われている。わが国では、「インターネットが経営戦略の一部として考えられていない」ことが重要な阻害要因であると指摘している事業所の比率が、10ヶ国の中で中国に次いで2番目に多かった。また、日本では、社内業務の効率性に関するインパクトが重視されており、「顧客サービスが改善される」や「競争的地位が改善される」という回答の比率は他の国よりも低かった。インターネットを業務改善の道具としてだけでなく、より戦略的な文脈のもとで活用することが求められている。
- 10ヶ国を比較してみると、全体的には各国はアメリカと同じ方向に向かっており、その差も縮まっているということが明らかになった。しかし、たとえばフランスはいわゆる先進国であるにもかかわらず、既存技術の普及が進んでいるためにインターネットの活用が遅れているといった国による特徴的な違いもあり、各国のEC活用状況について、定性的な情報も含めて今後も継続的に情報収集を続けることの意義は大きい。
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