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No.169 : 中東経済、発展の課題

上席主任研究員 武石 礼司

2003年6月

要旨

1.中東諸国の経済成長

中東諸国の経済成長率は、90年代に入った後安定的に推移しており、石油価格の乱高下に一喜一憂する状態からの脱却ができたかの感を呈している。ただし、財政を安定的に推移させるだけの石油価格が維持された際にのみ、中東産油国の経済が石油収入により下支えされた状況が生じているのであり、今後も世界のエネルギー消費において石油が主要な役割を果たす以上、中東産油国における石油依存経済からの脱却は容易ではない。

2.中東諸国の経済構造の多様性とその発生の原因

石油価格と各国の経済成長率との間の相関係数を算出してみると、石油輸出偏重の経済構造となっている中東産油国内においても、依存度に関して、すでに差異が生じていることがわかる。しかも、産油国であっても石油価格の急落と急上昇が、すぐに経済成長率の変化として現われる国と、一定程度の時間をおいて経済成長率の変化として現われる国とが存在している。中東諸国における経済パフォーマンスの差異の発生原因としては、例えばUAEでは輸出入額の増大をもたらしているフリーゾーン(ジュベールアリ)の存在を指摘できる。

3.中東域内貿易の分析

貿易開放度、域内輸出比率、域内輸入比率、輸出結合度指数、輸入結合度指数といった指標を用いて、中東諸国の域内での結合度を分析すると、ヨルダンとUAEが極めて重要な役割を果たしていることがわかる。また、イラクが市場に復帰した後には、クウェイトの重要さが増す可能性を指摘できる。

4.中東諸国の持続的発展とアジア諸国とのFTA締結交渉推進の有効性

中東諸国の持続的発展のため、従来採用されてきたプロジェクト別、セクター別といった援助の枠を超えた経済協力施策が組まれていく必要がある。地域の発展を目指し、人材を育成し、さらに中東地域に存在する石油・ガスを始めとした資源を活かす発展の方向付けを、中東各国が各々検討する必要がある。こうした検討の中から包括的なビジョンが作成され、これらビジョンを育てつつこの地域が発展を遂げ、かつ地域紛争の解決が進むことは可能であると考える。日本を始めとしたアジア諸国も、こうした中東諸国の発展と安定化に貢献すべきであり、そのためのビジョン作り、そうした目的に沿うと考えられるFTA締結のための交渉を中東の核となる国々(大国ではないがキーとなる国としてのヨルダン、UAE、クウェイト等)と早期に開始するべきである。その交渉の中で課題を一つ一つ克服していく努力が、極めて重要であると考えられる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 中東経済、発展の課題 [501 KB]