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No.167 : わが国の加工組立型製造業におけるスマイルカーブ化現象-検証と対応

主任研究員 木村 達也

2003年6月

要旨

  1. 近年スマイルカーブ化現象論が拡がりをみせている。スマイルカーブ化現象論とは、加工組立型製造業を中心とした製品の素材・部品-加工組立-販売-サービス等というバリューチェーンにおいて、従来は高かった加工組立の付加価値(率)もしくは利益(率)が、グローバルな競争の進展のもとで低下し、素材・部品やサービス等というバリューチェーンの両端の付加価値(率)もしくは利益(率)が上昇したとする考え方である。バリューチェーンのスマイルカーブ化はパソコンについて始めに提唱されたが、その後適用される議論の対象領域が拡げられ製造業全般にまで及んでいる。またバリューチェーンも、単位あたりの製品の製造を段階別に分けてみたものが最初であったが、製品についての部品・素材からサービス等までの独立した産業を段階別に捕らえバリューチェーンとしたものもある。さらにバリューチェーンの各部門間で比較する指標も当初の付加価値割合から、付加価値率、収益性、利益割合や利益率とするものまで拡がっている。このように議論は拡張し展開されているが、それらは概念的なものが中心で、データによる裏づけを伴うものは少ない。
  2. 本稿では、加工組立型製造業の製品についての部品・素材からサービス等までの独立した産業を段階別に捕らえバリューチェーンとし、利益率を指標にスマイルカーブ化の検証を行った。具体的には、産業連関表、法人企業統計年報などのデータを用いて、産業連関表の統合小分類(184部門)の総資本営業余剰率を算出し、85、90、95、97、99年それぞれについてバリューチェーンの段階別利益率(利益率カーブ)を計測することにより検証を行なった。検証を行なった業種は、加工組立型製造業全体と、民生用電子機器、民生用電気機器、電子計算機・同付属装置、通信機械、乗用車、トラック・バス・その他の自動車の個別6業種である。検証の結果は、スマイルカーブ化は検証した業種のうちで民生用電子機器、電子計算機・同付属装置、トラック・バス・その他の自動車の3業種で観察されたが、加工組立型製造業全体では顕著ではなく、その他の個別3業種については生じていなかった。
  3. スマイルカーブ化が観察された3業種についても、それが生じたメカニズムは、一般に考えられている中核部品の標準化やモジュール化に伴う競争激化による加工組立の利益率の低下というものだけではない。加工組立型製造業全体と個別6業種について、計測各年の労働分配率を85年と同等と仮定して利益率カーブを再計測すると、スマイルカーブ化が観察されたのは電子計算機・同付属装置のみであった。以上の計測結果から、スマイルカーブ化は加工組立型製造業の一部に生じている現象に過ぎず、また一般に考えられているようなモジュール化に伴う競争激化によるものは、スマイルカーブ化が生じている業種のさらにその一部で、労働分配率の上昇に伴い生じている現象である業種が多いことが示唆される。したがって、加工組立型製造業が利益率を向上させるための対策として、バリューチェーンの上下流へ進出することは、モジュール化に伴う競争激化によりスマイルカーブ化が観察される業種に限り本質的なものと考えられる。それ以外の業種では、実力主義賃金体系への移行や少数精鋭による事業体制の構築といった労働分配率を引き下げる対策の重要性が高い。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF わが国の加工組立型製造業におけるスマイルカーブ化現象-検証と対応 [729 KB]