No.163 : 制度改革を迫る地方財政の危機
客員研究員 白川 一郎
2003年5月
要旨
- 1992年のバブル崩壊以降、税収の落ち込みを背景に地方自治体の財政収支の悪化が続いている。1998年に入って、大都市圏を中心に財政危機宣言が出され、財政再建への真剣な取り組みが行われているが、この間地方自治体の財政状況は悪化の一途をたどっている。地方自治体の財政バランスを判断する主要な指標によってもこの点は明らかである。地方自治体の借入金である地方債の発行残高も急増しいる。地方債残高の歳入に占める比率も、都道府県では90年度の65.2%から2000年度には125.2%にまで高まっている。地方自治体の借金に依存する体質がますます高まっていることを示している。
- 地方財政悪化の要因には、歳入・歳出両面での要因があるが、自主的財源である地方税の動きと義務的経費との関係について、90年度から2000年度までの動きを見ると、二つの特徴的な動きが観察される。一つは、東京都・大阪府・神奈川県・愛知県などの大都市圏であり、法人事業税など税収の急激な落ち込みと経常収支比率の上昇が見られる。もう一つは、それ以外の都道府県の動きである。それ以外の自治体でも大都市圏ほど税収の落ち込みは顕著ではないにしても、経常収支比率の上昇が観察されている。都道府県・政令指定都市全体として、同じような財政収支の悪化傾向が見られることは、その背景に国と地方を通じる財政システムが大きくかかわっていることを反映していると考えられる。
- これまで、自治体の財政破綻が表面化しなかった背景には、国と地方を通じての財政システムの存在が大きくかかわっている。90年代を通じて、景気低迷による自治体の税収の落ち込みを、前半は地方債の発行で賄い、後半は地方交付税交付金によって賄うという姿になっている。さらに、地方交付税の税源そのものが減少しているなかで、交付税税源と交付税額とのギャップは財政投融資からの借入によってまかなわれるという形になっている。こうした国と地方を通じる財政システムが、地方自治体の財政破綻を表面化させない役割を担ってきたが、それが一方では自治体首長の財政規律を失わせる大きな背景にもなっているという問題がある。
- 地方自治体のプライマリ-・バランスを試算してみると、国と同様1992年度以降、赤字傾向が続いている。地方自治体においても、すでに通常の行政サ-ビスを提供するために、毎年新たな借金が不可避の状況に陥っていることを示している。現在の成長率、長期金利の状況が継続すると仮定すると、国・地方自治体の債務残高のGDP比を維持していくだけでも、巨額の財政黒字が必要になるという試算結果になる。このことは、今後の財政改革において、抜本的な歳出削減が必要になることを示唆している。
全文はPDFファイルをご参照ください。
PDF 制度改革を迫る地方財政の危機 [469 KB]
