No.149 : メディア産業の水平分離と新しいビジネスモデル
主任研究員 浜屋 敏
2002年12月
要旨
- デジタル化やIP化、ブロードバンド化という環境変化によって、情報財のインタフェースや取引のプロトコルが標準化されつつある。それにともなって、これまでのアナログ形式の情報財を扱うアナログ・メディア産業とはまったく異なる構造を持ったデジタル・メディア産業が生まれつつあり、将来はメディア産業の主流となると考えられている。アナログ・メディア産業の組織が情報の伝達路(ネットワーク)の種類に依存した垂直統合型であったのに対して、多様なデジタル情報を伝えることのできるIPネットワークを伝達路とするデジタル・メディア産業の組織は水平分離型になると考えるのが自然である。メディア産業の水平分離や上下分離に関する主張は以前から存在しており、最近は産業界からも競争を促すために水平分離を進める要望が提出されている。
- 競争促進や制度設計の観点からは、デジタル・メディア産業の組織が水平分離型になるということは非常に重要である。特に制度設計においては、たとえば、著作権制度を考える際に、文章、静止画、動画、音声といったコンテンツ(情報の中身)の種類別に制度を設計するのではなく、従来のコンテンツの種類の違いを超えて、デジタル情報の特性を生かすことができる統合的な著作権管理制度を設計することが望ましい。また、ネットワーク・インフラの整備についても、従来の放送法や電気通信事業法のようにインフラの種類別に管理するのではなく、電波や電話線、CATV回線など異なる種類のインフラを同じ枠組みで管理できるような制度が必要とされている。
- 制度設計のためには水平分離型の産業組織を前提に置く必要があるが、そのことは、必ずしも企業の事業構造も水平に分離しなければならないということではない。競争政策上の制約もあるが、デジタル・メディア産業において垂直統合型の事業を行なうか、水平分離型の事業を行なうかというのは、個々の企業が判断すべき問題である。本稿では、デジタル・メディア産業における事業要素を、1.ファシリティ・プロバイダ、2.サービス・プロバイダ、3.コンテンツ・ディストリビュータ、4.コンテンツ・プロバイダという4つに分解し、それぞれのコスト構造や収益構造を分析した。さらに、4つの事業要素の組み合わせで考えられる事業パターンが10個あることを示し、その10個の中で将来有望になると考えられるものを5つ抽出した。現実のISP(インターネット・サービス・プロバイダ)産業の構造と事業内容を分析してみると、今後主流になるであろうISPの事業展開はこの5つの中のどれかになることも明らかにすることができた。
- 企業が事業展開を考えるにあたって、垂直統合型を指向するか水平分離型を指向するかということは、メディア産業だけでなく他の産業でも重要な問題である。本稿においてデジタル・メディア産業の構造を分析するために用いた考え方は、他の産業の産業組織のあり方や支配的なビジネス・モデルのあり方を検討する際にも効果的であると考えられる。
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