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No.145 : 価格下落脱却に向けた企業のR&D活動

主席研究員 安部 忠彦

2002年10月

要旨

近年、多くの製品やサービスで販売単価が下落し、企業に悪影響を与えている。ここでは価格下落脱却に向けて、企業レベルではどのように対応すべきかについて考えてみたい。

先行研究によれば、販売単価下落の理由としては「国内他社との競合」が最も多く、次いで「需要の落ち込み」が挙げられている。需要の落ち込みで、価格競争に向い易い日本の産業内構造と企業の体質が顕在化していると思われる。企業が当面実施している価格下落対策としては、効率化を目指した仕入れコスト削減策が比較的多く、価格下落傾向は当面継続する。しかし将来的には新商品開発や高付加価値化などが志向されている。企業が新商品開発や高付加価値化対策を選ぶ割合と、その企業の業績との間には正の相関関係がみられ、今後これらの対策を成功させることが重要である。

これら2つの対策は、主として研究開発活動により実現することが期待されている。実際両対策を選ぶ割合が高い産業ほど、対売上高研究開発費比率は高くなっている。しかし特に90年代後半以降、企業の研究開発投資効率は、投資額が大きいIT産業中心に対付加価値額や対営業利益で見て低下し、また新製品開発力も低下している。研究開発活動によって新商品開発が促進され、高い付加価値が得られる新たな仕組み作りが重要となる。

研究開発活動の効率が下がった原因は、[1]企業の横並び体質の強さ(産業内構造において、規模が似通った多数の大企業から構成されている、製造する製品が各社似かより絞り込まれていない)、[2]競合他社と差別化された独創的な技術が少なく、収益性に結びつかない、[3]価格が維持され易いサービスやソリューションの提供・新たな価値提供よりも、ハードの機能差別化にこだわっている、[4]市場が縮小しつつある従来市場に執着しがちなことなどによる。

このような、産業内構造と日本企業の体質を乗り越えて新規需要創出・差別型企業になるための方策としては 1.横並びからの脱却([1]似た製品の幅広さを競うのでなく、製品の特性を考えて、シナジー効果が発揮できる最少の製品群に事業を再編・交換する、[2]勝ち組み企業誕生を阻害しない政策、例えば多数企業を集めた国の共同研究からトップランナー育成型の研究開発支援)、2.改良特許から独創的差別化技術・特許戦略への転換(発明成果に見合った報酬、企業の知的情報の保護)、3.新規需要の開拓([1]ハードの機能差別化からソリューション付加による差別化へ、そのための人文科学型研究開発のウエートを高める、[2]従来型顧客ニーズ対応のみから新規顧客ニーズへの注視とユーザーとの共同開発)などがある。

いずれにしても、大きな経営戦略の転換が必要で、それを推進できる仕組みとリーダーシップある経営者の役割が大きくなる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 価格下落脱却に向けた企業のR&D活動 [565 KB]