No.134 : 知識型産業における競争力獲得に向けて
~情報サービス産業を例として~
主席研究員 安部 忠彦
2002年4月
要旨
- 中国などアジア各国におけるモノ造り能力の急進展、IT製品の組立工程での付加価値低下などにより、日本の製造業の競争力が低下し成長が低迷している。これに代わる新たな牽引産業として、成長力と知識型産業の性格を兼ね備えた情報サービス産業への期待が大きい。実際多くの企業がこの分野にシフトし始めている。
- 日本でこの産業が競争力を持ち、大きく成長するための課題は何か。ユーザー側では、専業のCIO(情報担当オフィサー)を設置し、投資効果を分析・検証しつつ、安定した需要を提供する事が重要だ。
- 供給側では、従来日本のソフトウエアは、ユーザータイプでは特定ユーザー向け、製品 タイプではプログラムの論理性よりも、業務や機器との一体性、エンタテインメント的 な要素との融合性を重視した分野で強みを発揮してきた。受注ソフトや機器一体型、ゲ ームソフト等である。しかし現在この産業を牽引してきた受注ソフトから、日本が弱い とされてきた自社ソフトプロダクツやITサービスへのシフトが求められており、その シフトをうまく行う必要がある。
- 自主ソフトプロダクツでは英語能力が重要だが、その他では研究開発の重要性が高い。日本企業も実施はしているが、開発が主体で、かつ専業大手企業はそれほど研究に積極的でない。国や大学も消極的で基礎研究分野が弱く、世界のトップ企業との技術や市場占有度の差は拡大している。国や大学の研究開発支援、大手専業企業が世界のトップ企業と伍した積極的な技術開発を行うことがシフト上不可欠だ。
- 一方従業員20人以下の小規模企業には、研究開発に熱心で、自社製品を持ち、生産性の高い企業の割合が高く、バブル崩壊後も生き延びた企業が多い。専業大手企業や企業の特性が小規模企業の対局にある中堅企業は、自社開発製品に過度にこだわらずこうした小規模企業の開発力と製品を活用し、業界あげて日本企業にとって使いやすいベストプラクテイスを集めたデファクトスタンダード型ソフトの育成に努めるべきだ。
- ITサービス分野へのシフトに関しては、研究開発よりも社内教育をベースとしたナレッジ活用が重要だ。しかし日本企業の対売上高教育費は、世界のトップ企業に比べはるかに低い。教育投資を高めeラーニングなど教育の社内体制整備と同時に、教育の目標レベル設定と達成時の報酬を明確にして、個人能力を上げ生産性を高め、日本にふさわしい高賃金産業としてのITサービス産業を育成すべきだろう。
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