No.129 : 地方税の徴税率アップにむけた方策
-電子申告とIntegrated Tax System-
公共コンサルティング事業部 コンサルタント柏木 恵
2002年2月
要旨
- 地方自治体の財政難が依然続いている。財政難からの脱却の方法は、歳出抑制、行政の内部事務の効率化などいろいろと考えられるが、あらゆる状況を勘案すると、まずは歳入の財源確保つまり地方税収の確保が挙げられる。財源確保の方法としては、(1)国から地方への税源移譲、(2)課税自主権による新税導入、(3)地方税の徴税率アップなどが挙げられるが、なかでも、地方自治体独自で無理なく取り組める方法は、行政内部の自助努力の部分が多い、地方税の徴税率アップである。
- 一方、昨今のIT化から政府が2001(平成13)年3月に打ち出した「e-Japan」の重点計画に電子政府(2003(平成15)年度目標)・電子自治体(2005(平成17)年度目標)の実現がある。その実現に向けた先導的な取組の1つに電子申告が挙げられる。電子申告は納税者の負担軽減のほか、徴税率アップや行政事務の簡素化の目的をもつ。この導入にむけて、総務省は地方税の電子申告システムの研究開発に乗り出し、国税庁は電子申告の実験を行った。
- わが国の電子申告導入に先駆けて、諸外国ではすでに電子申告が行われている。アメリカ・イギリス・カナダはそれぞれ特徴ある電子申告方法を採用しているが、オーストラリアが最も簡素な方法を採用している。諸外国の電子申告が成功しているのは、納税者番号制による部分が大きいと考えられる。
- アメリカでは、行政事務の効率化だけでなく、歳入増加、住民サービスの向上、そして納税者の負担軽減などを目的とした政策として電子申告も含めたIntegrated Tax System(以下ITS)と呼ばれる税統合システムが展開されている。わが国でも今後、歳入増加・税収確保にむけて、行政事務の効率化、住民サービスの向上なども含むITSの導入は検討の余地があると考える。そのため、先進事例としてウィスコンシン州の事例を紹介する。ウィスコンシン州はこのITSを導入するにあたり、明確な目標をたて、戦略とその戦略に対する業績評価としてバランスト・スコアカードを採用している。一方、今までシステムを導入する場合、コスト面からみた分析はされてこなかったが、費用対効果分析や資本回収期間などのシステム投資評価も行い、意思決定している点も特筆すべき点である。
- 地方自治体における地方交付税削減や財政難という現状からみても、電子申告やITSの導入がわが国にもたらす影響は大きい。この電子申告やITSを導入すると行政事務の簡素化・効率化が図れ、税収確保、予算削減、住民サービスの向上が実現する。一方、納税者にとっても、申告・納税その他手続の負担軽減や早期還付や情報サービスの実現が可能となる。したがって電子申告やITSの導入による効果はわが国の直面する問題の解決策の1つになるのではないかと考える。
- 「e-Japan」構想のもと、わが国において電子申告やITSを導入する際の課題は(1)納税者番号制の検討、(2)意思決定のための事前・事後のシステム評価、(3)明確な目標設定、綿密な計画策定・進捗管理・業績評価である。特に(2)、(3)の経営の視点を盛り込むことが成功をカギといえる。
- わが国においても、中央集権主義から地方分権主義へ、歳出中心の運営から歳入中心の経営へ、財政面では3割自治から課税自主権へという流れの中で、確実な税収確保にむけて、税システムは財務会計、予算編成、行政評価や人事管理など個々のシステムとの連携の必要性がでてきた。これは税務行政内部の統合だけでなく他部局との連携を図るITSの導入によって実現可能となる。そしてこれが電子自治体構築にむけた1つの形であると考える。そのため、地方自治体において電子申告および税システムの構築の際、ITSの概念は有効であると考える。
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