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No.127 : メガ合併について
-関心獲得競争の観点から

上級研究員 新堂 精士

2002年1月

要旨

  1. 前期の研究「IT革命と時間の稀少性」において、時間の稀少性の存在から生じる個人の関心の稀少化、それにともなう企業による関心獲得競争の進展というアイデア(一言で言えば「関心の独占」仮説)を提示した。同時に、近年注目を集めるメガ合併も、この文脈で説明あるいは解釈することがよさそうであると示唆した。
  2. 本稿では、メガ合併について関心獲得競争の観点から考察を深める。はじめに、メガ合併について事実観察を行い、さらに先行研究の集約と個別事例の調査によって、メガ合併がなぜ生じるのかについて「関心の独占」仮説も一つの有力な根拠であること示す。具体的には、1990年から2001年までの日経4紙の記事から、「メガ合併」「大規模合併」「大型合併」「大合併」をキーワードに検索を行い、その中から重複などをさけて調査していくとまず、以下のような事実が観察される。
  3. 1.1990年から2000年にかけて世界中の様々な業種で(防衛宇宙産業から銀行まで)137件におよぶメガ合併があった。2.メガ合併は概ね増加傾向にあり、後半特に増加傾向が見られる。3.業種的には金融が最も多く全体の36%を占めている。それ以外の業種は、海外で、通信・メディア、小売業、化学・医薬品産業が、また、日本では紙パルプ産業が目立つ。4.全業種をBtoC産業とそれ以外の産業に分けると、BtoC産業に属する企業の全メガ合併に占める割合は、海外で70%、全体でも60%を占めている。特に日本では調査期間の後半この割合が増加した。
  4. 一般に「規模の経済」や「範囲の経済」が合併の理由とされるがこれらの概念を整理すると、1.大量生産によるメリット、2.固定費のシェアによる製品一単位あたりの平均費用の低下、3.価格支配力あるいはバーゲニングパワーの強化、4.技術やノウハウのスピルオーバー効果、5.リスクの分散効果あるいはポートフォリオ効果、6.ワンストップショッピングによるシナジー効果となる。これらに加え、本稿では7.関心の独占仮説がメガ合併の要因として挙げられると考えた。
  5. 本稿における結論は、以下の4つに整理される。1.特にBtoC産業におけるメガ合併を規模の経済や範囲の経済で説明することには無理がある。2.メガ合併への説明としてBtoC産業を中心に「関心の独占」仮説が有効である。3.90年代後半から続く製薬業界でのメガ合併については、規模の巨大化によるリスク分散や技術面でのスピルオーバー効果を狙ったものと解釈できる。4.メガ合併の目的は、規模の経済や範囲の経済を利用したコスト削減であるという通説はかなり疑わしい。
  6. メガ合併の中に「関心の独占」を目指したものがある場合には社会厚生上も新たな注意が必要となる。第1に、メガ合併によって顧客の関心という稀少性の高い資源を囲い込むことに成功した企業は、必ずしも効率的であるとは限らない。従ってその企業が持つ非効率性は温存される。第2に関心の独占を狙うと最適な企業規模に比べ企業規模が過大になることが予想されるが、そのことのために非効率性が発生することになる。第3に、各企業が関心獲得競争に注力する結果、関心獲得競争は激化し、その中で関心の独占に失敗した企業がそのために費やした費用は全くの無駄になる。
  7. このような新たな非効率や無駄に対処する方法としては、1.従来の生産手段や土地などの物件的な権利についてのみ規制している独占禁止法を見なおし、「関心」についてもその対象とするような拡張を行うこと、2.あるいは独占的な企業を認可するとしてもその代わりにそうした企業へのペナルティー強化すること。具体的にはそうした企業への課税の強化といったことが考えられる。さらに3.そもそも関心の独占を防ぐように、「検索を浸透」させるように試みること。具体的には検索を行うNPOなどの活用、個人レベルの情報発信に対して責任を軽くするような社会システムの構築などがありうる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF メガ合併について -関心獲得競争の観点から [62.0 KB]