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  5. 構造改革後における経済成長率向上の可能性 -計測上の問題点を補正算出したTFP変化率からの示唆

No.125 : 構造改革後における経済成長率向上の可能性
-計測上の問題点を補正算出したTFP変化率からの示唆

主任研究員 木村 達也

2002年1月

要旨

  1. 日本経済の90年代は、失われた10年とも称される長期にわたる低迷が続いた。現在この状況を克服するため、日本の成長の障害となってきた規制・慣行や制度を根本的に打破する経済社会の構造改革が進められようとしている。しかし構造改革により成長への障害が除去された場合の経済全体の成長可能性や、どの産業が成長部門であるかなどの判断の基礎となる全要素生産性(TFP)変化率の計測には問題が多い。問題点は、�生産関数の1次同次性、完全競争市場が通常仮定されること、�TFP変化率の計測に用いられる資本ストックデータは民間企業資本ストック統計であることが多いが、これは粗資本ストックであり純資本ストックでないこと、�経済全体(全産業)の計測では通常、資本として償却対象有形固定資産が用いられ、土地が除外されていること、�製造業では資本投入量について稼働率が調整されるが、全産業および非製造業では稼働率調整が行われないこと、�雇用人員の過不足に対し、労働投入量の調整が行われないこと、などである。
  2. 本稿は、これらの問題点を補正したTFP変化率を全産業および産業別に計測した。計測にあたっては、�生産物である付加価値が資本、労働、生産効率の関数であること、�資本投入量と中間投入量が比例関係にあること、�関数の連続性、以外に生産関数の特定化は行わず、また完全競争市場を仮定していない。このため、資本コスト単価を各産業について計測している。純ストックとしての償却対象有形固定資産系列、土地ストック系列は、法人企業統計年報のデータなどをもとにベンチマークイヤー法(ベンチマーク70年度)により作成し、両系列を合計しTFP変化率の計測に用いる資本ストック量とした。全産業と非製造業の資本稼働率については、深尾・村上[2001]を基本に中間投入・資本ストック比率を用い推計した。労働投入量の調整は、日銀短観による雇用人員判断の選択肢別社数構成比からカールソン・パーキン法により労働力過不足の量的指標を作成し、労働市場に想定した不均衡モデルのもとで推計した平均労働過不足率が解消されるように実際に観測された労働投入量を調整した。
  3. TFP変化率の計測結果をみると、全産業で全く補正を行わない計測値は、すべてを補正した計測値に対し、年度平均で92~95年度1.5%、96~98年度2.3%の過小となる。この結果は、資本、労働力の過剰を早期に解消し、またその流動性を高め両投入要素の過不足が生じないようにすれば、従来のTFP変化率の計測から判断するより高い成長が可能であることを意味する。産業別においては、従来の計測ではTFP変化率が96~98年度平均でプラスの業種は製造業、運輸・通信業のみだが、すべてを補正した計測ではこれに卸売・小売業、電気・ガス・水道業が加わる。これらの産業も資本・労働力の過剰が解消され、その流動性が高まれば成長の可能性がある。したがって、早期に構造改革を進め過剰な資本・労働力を各産業から切り離し、またその流動性を高めることが重要である。さらにすべての補正を行ってもマイナスのTFP変化率が計測される産業は、産業特有の構造問題を解決する必要性が高いとみられる。また過剰な投入要素を企業から切り離すことによる生産性の上昇を成長率の向上につなげるためには、既得権益の影響を排除した規制撤廃・緩和、制度改革などによる新市場の創出が重要となる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 構造改革後における経済成長率向上の可能性 -計測上の問題点を補正算出したTFP変化率からの示唆 [195 KB]