No.115 : グローバル下での望ましい対中経済政策
上級研究員 金 堅敏
2001年10月
要旨
- 中国市場の潜在的な魅力と、生産拠点としての優位性から日本企業の対中生産シフトが進展しているが、これに伴い国内産業が空洞化してしまうのではないかとの懸念が生まれつつある。また、生産シフトに伴う輸出減少と逆輸入増で、対中貿易収支の悪化がさらに進み、日本の貿易収支が赤字に転落するという懸念も聞かれ、安い中国製品の急増は、競争力の低い国内産業に打撃を与えていると心配されている。こうした中で、日本は対中輸入制限を強化し、生産の対中シフトを抑制すべきとの議論が強まっている。
- 1990年代、中国の製造業分野における外資系企業の大量進出により、中国の対外貿易の約50%は外資系企業によって行われる現状にある。対日貿易については外資系企業の割合は60%にも達し、しかもほとんどが日系企業によって行われている。これに、日系企業による「開発輸入」・「委託生産」による輸出分を加えると対日貿易の約80%に日系企業が深く関わっている。対中輸入制限政策は、日系企業のグローバル戦略、生産財、中間財・部品の対中輸出の誘発効果等から考えると自ずと限界がある。
- 対中貿易赤字が拡大していることは、対中輸出の停滞に大きな原因がある。中国の輸入制限措置や知的財産権侵害も一因ではあるが、中国市場における日本製品の競争力が低下している可能性も大きい。特に、90年代後半に、輸出誘発効果の大きい対中直接投資が減少したことが対中輸出低迷と関連している。対中直接投資の輸出誘発効果は、製造業中心の韓国や台湾の対中投資と対中輸出の関係からも確認できる。日本の製造業における海外生産比率は、ドイツや米国の半分しかない。非効率な生産が国内に数多く存在している。ドイツの例から見ても対外直接投資の拡大は必ずしも貿易収支の赤字化をもたらしてはいない。
- 日本は、輸入制限や生産の対中シフト抑制ではなく、ダイナミックな経済成長を続けている中国発展の活力を取り込み、経済成長の果実をシェアしていくことが必要である。そのために、1.対中輸出振興、2.対中投資の拡大、3.国内産業の高度化、4.国内産業調整メカニズムの確立といった政策を取るべきである。具体的には、中国のWTO加盟コミットメント履行をモニタリングする組織の設立、日系企業に対する知的財産権保護、貿易信与、人材育成等への支援、産業・製品競争力に基づくGSPの供与や外資誘致のための事業環境整備、「世界のR&Dセンター」を目指した研究開発体制の強化、「産業調整ファンド」の設立が挙げられる。
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PDF グローバル下での望ましい対中経済政策 [130 KB]
