No.108 : 金融M&Aの経済学
客員研究員(一橋大学助教授)渡辺 努
2001年6月
要旨
金融産業ではこの10年間で7,600件、金額にして1.7兆ドルのM&Aが行われており、金融産業の構造が大きく変化しつつある。金融M&Aのトレンドの背後にある要因としては通常、規模の経済や範囲の経済が挙げられることが多い。しかしこれまでの実証研究によれば、規模の経済や範囲の経済が銀行収益に貢献する度合いは小さく、こうした要因で金融統合のトレンドを説明することはできない。特に,1990年代後半以降急増しているメガ統合はこうした要因では説明できない。本稿では、金融M&Aのトレンドを説明するための仮説として、(1)企業規模の拡大により潜在的な顧客の関心を強く惹きつけるために統合を行う(「関心の独占」仮説)、(2)経営者が自らの生き残りのための戦略的な手段として統合を行う(塹壕(entrenchment)仮説)、という2つを提示し、これらの要因が金融M&A、特に最近のメガ統合の背景にあることを指摘する。また、金融M&Aが金融産業の競争状態や中小企業の資金調達に及ぼす影響、またtoo-big-to-failなどプルーデンス規制上の問題についても議論する。
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