No.86 : 中国の社会保障制度の整備と国有企業改革
主任研究員 朱 炎
2000年7月
要旨
- 中国においては、国有企業改革の一環として、国有企業に社会保障制度を導入した。国有企業を社会的負担から解放し、人的費用負担を軽減させ、経営業績を好転させることが主な目的である。
- 国有企業の余剰人員の削減は、企業の自助努力と政府が推進するレイオフ計画によって行われ、失業保険など多重のセーフティネットがスムーズな人員削減、人件費の節約に大きく貢献している。
- 年金保険と医療保険の実施は、企業経営の安定化に貢献できるが、現段階では多くの企業において保険掛け金の負担が実施前の年金支出と医療費支出より多くなる結果となっている。しかも、実施前の制度による年金支出と医療費支出を完全に社会保障制度に移すことができず、二重負担にもなっている。
- 社会保障制度の導入と整備は、国有企業改革の推進のうえで不可欠であるが、社会保障制度を十分に機能させるためには、さまざまな問題を解決し、改善していかなければならない。企業サイドには、社会保険の負担が重過ぎること、企業の滞納が増加していることなどの問題が挙げられる。社会保障の政策決定と基金運営のサイドからみれば、合理的な負担水準の設定や、制度の全国的な統一、基金の運用範囲の拡大などが今後の課題となる。
- 社会保障制度は、国有企業改革に対して、人的費用の負担軽減という一部の効果しかないことを認識しなければならない。国有企業改革の成功には、民営化などの抜本的な改革が必要である。
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