No.52 : ポスト通貨危機のアジア再興戦略
-過度な外貨依存からの脱却と実力相応な経済成長-
主任研究員 柯 隆
1999年5月
要旨
- アジア通貨危機が発生して以来、2年を経過した。通貨危機をめぐる今までの議論は、(1)アジアの成長は神話だったのか、(2)その神話が終わったのか、(3)経済はいつ奇跡的な成長に戻るのか、あるいは戻れないのか、(4)経済再生は2、3年先なのか、4、5年先なのか、といった目下の現実にとらわれ過ぎた極めて表面的なものが多い。
- P.クルーグマン教授によって提起された従来のアジア開発モデルに対する警告は、アジアのポテンシャルを否定するものではなく、extensive growth modelに基づくサステナビリティの欠如した成長戦略に対する疑問ではないかと思われる。
- 教授のイシューから派生的に生まれた数多くの「奇跡終焉論」は、アジアのポテンシャルを否定するようなものであり、正当性は認められない。これらの「終焉論」に反論するかのように、アジア経済が2、3年以内の短期間のうちに高成長に回帰するといった「リエマージング・イシュー」(再興論)も数多く提唱されている。
- 一方、アジアのポテンシャルとは(1)巨大な潜在的市場、(2)豊富な教育人材、(3)貯蓄好きの民族性、(4)政治的安定性、(5)牽引役としての日本の役割、(6)中国経済の飛躍的な成長、である。
- アジア経済がサステナブルな成長を目指すには、extensive growth modelからintensive growth modelに方向転換する必要がある。具体的には次の諸点があげられる。
第1に、実力に見合った経済成長を目指す。財政収支バランス、経常収支と資本収支のバランス、貯蓄率と投資率のバランスなど健全なマクロ経済バランスを維持しながら、経済成長を目指すべきである。
第2に、過度な外資依存体質からの脱却である。外資をあくまでも「起爆剤」的な存在として位置づけし、国内のポテンシャルにもっと目を向けるべきである。安易な外資導入にかわり、国内の金融的貯蓄の有効利用を考えるべきである。またこのための国内金融システムの構築および関連の法整備を早急に行う必要がある。
第3に、政府による経済活動への介入は、市場機構を介して行うべきである。現実的に考えて、政府の役割は排除できないが、それをせめて市場メカニズムにもとづいて実施しなければならない。
かくして、構造調整を着実に実行すれば、アジア経済は、一時的な高成長ではない、よりサステナブルな成長軌道に回帰できると考えられる。
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