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No.44 : 人民元のソフトランディングに向けて

主任研究員 金 堅敏

1999年4月

要旨

  1. 中国では、 1994年1月の人民元レートの一本化や1998年12月の外為市場の統合により 外貨管理の市場化が進捗している。 他方、アジア通貨危機等、 国内外の経済環境が大きく変わってきているにもかかわらず、 人民元レートが市場需給関係ではなく人為的に維持されている。 通貨危機に直面している金融市場の安定維持の観点から一時的な措置として 為替レート維持の政策介入は評価されるが、 中長期的には経済法則に従わなければならない。
  2. 名目上、中国の為替制度は経常項目が自由化され、 為替市場は「市場需給に基づく管理変動相場制」を実施している。 しかし、外貨需要・供給に規制を設けると共に、 人民元レートの変動幅規制等により、人民元相場は人為的に管理されている。 そのような歪んだ外為市場構造は外貨管理の難しさを増し、 為替レートの持つ国際収支調整機能が働かなくなる。 アジア通貨危機の中で、中国の外貨管理政策の限界は再び露呈された。
  3. 外貨管理のコスト・パーフォーマンス及び 国際収支調整機能の発揮という観点から、 実質的にも 「管理変動相場制」への移行が中国内外にとって最善の選択と言える。 競争的、かつ需給関係を十分に反映させる外為市場を構築するためには (1)外為市場における外貨需要の抑制政策の撤廃、 (2)強制決済制度の緩和ないし廃止、 (3)外為指定銀行に対するポジション管理の緩和ないし 廃止等の政策が必要となる。 市場介入を行う必要がある場合の適性相場判断基準について、 本稿は外貨の供給と需要の両面における資源の最適配分の観点から 経常収支部門(製品とサービスを含む)の利潤最大化のときの為替 レートを適正相場の判断基準にすることを提案する。
  4. 人民元相場の人為的な固定情況から市場需給関係に基づく 相場決定メカニズムへの移行はアジア金融市場にとって 少なからぬインパクトを与えるに間違いない。 したがって、制度移行の外部環境整備が必要となる。 短期資本移動へのモニタリング制度、 新宮沢構想等多角的通貨安定化枠組みの早期実現が求められる。
  5. 外貨準備残高や対外債務残高等を合わせて考慮すると、 外資導入や対外債務問題は人民元相場調整の大きな支障にならない。 香港ドルペッグ制の維持にも人民元の固定化より中国の政治安定や経済発展が より重要である。 米国の対中赤字の解消は対中輸出拡大が必要である。 管理できないキャピタルフライトを増幅させる人民元相場の固定化は米国からの 輸入拡大のための外貨供給保証にならない。