No.42 : 情報通信ネットワークと東アジアにおける域内分業体制の変化
主任研究員 杉浦 恵志
1999年2月
要旨
- 80年代は賞賛を浴びた「日本型経営システム」も、 90年代には限界を迎えている。 グローバリゼーションが進んだ結果、 海外拠点に役割の競合や稼働率のバラつきが目立ってきた。 また、極限的な短納期化や商品ライフサイクルの短縮に、 日本型における人間関係を軸とした利害調整ではもはやついていけない。 そのうえ、アジア経済危機は、稼働率低下、為替変動リスク、 資金調達難の三重苦をもたらし、企業資産全体の最適活用が急務である。
- こうした難局を克服するには、 ネットワーク技術を駆使した情報の共有が不可欠である。 情報の共有を通して、 為替変動に応じた最適地調達や新しいサプライヤーの開拓、 機動的な生産計画の変更や在庫の融通、 取引相手との生産計画同期化による在庫の削減、 生産直前の設計変更が可能になる。 こうした突然の変更に柔軟に対処できるよう、 海外拠点に対する技術支援システムの電子化もすでに始まった。
- シームレスに流れるのは情報だけではない。 モノの流れも情報処理が遅れたために滞っている場合が多い。 域内分業との関連では、貿易手続きを簡素化し、 荷主、船会社、海貨業者や通関業者、港湾当局や税関、 さらには金融機関を含めて電子的に仕事を受け渡しすることにより、 モノの流れは大変円滑になる。 情報戦略を武器にして、 域内物流の効率化(による顧客企業の資本効率向上)を請負う業者も現れた。
- 情報共有を支える技術には問題点や法制度との齟齬も少なくないが、 いずれは改善する。 そのとき域内分業体制や各国の経済発展にはどんな影響を及ぼすのか。 日本企業は域内現地法人や協力企業に対し、 金と時間をかけて組立から加工、ときには設計まで技術移転を行っているが、 本社側の都合や無理解でその能力は十分に発揮されていない。 情報の共有が進むと、現地事情は直ちに生産・調達計画に反映され、 海外拠点に正当な活動機会が与えられるようになるだろう。
- しかし、効率偏重は現地従業員が自分たちで問題を 解決する経験を奪ってしまう。 情報や将来は知識さえ簡単に手に入るようになるが、 知識創造能力はそうもいかず格差が拡大する。 各国の自助努力は今以上に重要になり、政府自ら問題解決の場を用意したり、 多国籍企業から知識創造の機会を与えられるような 人材の育成を行うべきである。
