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No.38 : 東アジアの金融システムの再構築

主任研究員 村上 美智子

1998年9月

要旨

  1. 今回の東アジア経済危機では、 金融システムの脆弱化が危機発生の原因や危機の深刻度を 増幅させる要因となったほか、 危機の過程で金融システムの脆弱性が露呈するという展開もみられた。 東アジアの金融システムが脆弱化したのは、 自由化や対外開放に伴う競争激化により 金融機関の過度のリスク・テイクが生じ、 バブル形成や過剰投資をまねいたためである。 さらに、その過程で海外からの短期資金の調達拡大が 対外資産・対外負債のミスマッチを高めていたことも 経営基盤脆弱化の要因となった。
  2. 東アジアでは、内外貯蓄の動員や効率的な資金配分の実現を目指し 1980年代終わり頃から、金利自由化、業務規制・参入規制の緩和、 資本市場の整備・育成、為替・資本取引の自由化および 規制・監督体制の整備・拡充などの金融改革が加速した。 こうした競争促進政策は金融機関経営の効率化や健全化を促したものの、 依然として非効率な経営が温存されていたほか、 資産・負債の管理やリスク管理の能力も立ち遅れていた。
  3. 1990年代以降、高成長の持続や資本取引の自由化を背景に 短期対外債務が累積していたため、 今回の通貨急落により非金融事業会社の対外債務返済負担が増大し、 タイ、韓国、インドネシア、マレーシアでは巨額の不良債権が発生した。 各国では金融機関の整理再建、 不良債権の処理、規制・監督体制の整備などが進められているものの、 景気後退が深刻化するなか、 急務となっている金融機関の資本再構築はきわめて困難な状況にある。
  4. 日本は、本来であれば、 自らの金融システムをいちはやく健全化させて 東アジアとの間で資金の好循環を実現するとともに内需拡大を図り、 東アジア経済の牽引力となるべき立場にある。 今こそ、こうした自覚にたち、 早急に不良債権の処理を行い景気回復への道筋をつけなければならない。