No.33 : 製造業の競争力基盤の変容
主任研究員 米山 秀隆
1998年6月
要旨
- これまで日本の製造業の強みとしては、 生産現場に密着した技術(現場密着型技術)の存在が指摘されてきた。 ところが、近年の海外生産の急速な進展や情報技術(IT)の発達に直面して、 現場密着型技術が失われている可能性、 あるいは競争力の要素として現場密着型技術の役割が 低下しているという可能性が生じている。 本稿は、こうした点の実態を企業ヒアリング調査によって 明らかにしようとするものである。
- 海外生産移転の影響に関しては、現在までのところは、 国内の現場密着型技術が失われる大きな要因とはなっていない。 現段階では、海外生産比率が高い企業でも、 製品試作や金型づくりなどを含む量産試作といった 実際の生産を準備する段階を、国内に残しているためである。 しかし、将来的にみれば、実際に生産が行われる場で、 現場密着型技術が蓄積されていくと考えるのが自然であり、 その意味で国内の現場密着型技術の空洞化懸念は否定することはできない。
- ITの発達の影響については、CAD/CAMやCALSの活用によって、 現場密着型技術が代替されつつあることは確かであるが、 現段階では、ITで代替できない部分も残されている。 ただし、分野によっては、ITの活用によって製造技術のシステム化が進み、 現場密着型技術の役割が急速に低下しているものもある。
- 将来を展望すると、ITの発達により、 現場密着型技術の多くの部分が代替される可能性がある (現場密着型技術のシステム化、標準化)。 また、ITで代替できないノウハウなどについては 実際の生産現場でなければ蓄積することは難しい。 これは、日本の製造業にとって、 競争力基盤としての現場密着型技術の意味が 急速に薄れていくことを意味する。 こうした状況に対応するために、 日本の製造業は、 今後の競争力の重要な源泉となり得る要素技術の開発を 推進していく必要がある。
