No.32 : アジア通貨危機におけるIMF等の緊急支援とその評価
研究員 金 堅敏
1998年5月
要旨
- アジア通貨危機はタイを震源とし、 ドミノのように東アジアの大部分の経済を巻き込み、金融危機、 さらに経済危機へと被害に広さと深みを伴った。 特に、タイ、インドネシアと韓国の被害がもっとも深刻であった。 通貨・金融・経済危機を回避するため、 アジア各国政府はそれぞれ努力してきたが、自助努力も限界に達し、 結局、上記の三ヵ国はIMFに支援を申し入れ、 国際的な協調体制に事態の収拾を託した。 本稿は、 この三ヵ国に対するIMFが音頭をとっている公的緊急支援をサーベイする (第一部)と共に、IMF支援の評価(第二部)を加えたものである。
- 第一部では、支援とそれに付随する条件を検討する。 タイ、インドネシア、韓国はそれぞれ39億ドル、101億ドル、 210億ドルをIMFから支援されると共に、 世界銀行等の国際金融機関や関係各国政府が総額172億ドル、330億ドル、 570億ドルの公的支援枠を取り付けた。 その際、IMFは、ラテン・アメリカ金融危機解決に効果を見せた緊縮経済政策と 旧ソ連等の市場移行支援に取った 経済構造調整策を合わせた融資コンディショナリティーを 被支援三ヵ国に要求した。 世界銀行とアジア開発銀行及び支援参加国政府は、 金融支援面においてIMFを上回るにも関わらず、 その支援を発動するかどうかはIMFの判断に委ねている。 タイと韓国はIMFの条件を概ね遵守しているが、 インドネシアはなお不透明である。
- 第二部では、IMFの持つ「お墨付き」機能が アジア通貨危機の回避と将来の経済成長に大きく影響するので、 三ヵ国に課しているコンディショナリティーの妥当性を検討する。 「国際収支の中期的維持可能性」 の実現というIMF支援の最大の目的を前提に、緊縮財政政策、 過度な金融引き締め及び弱体な金融機関や 経済構造の改革への取り組みを検討した上で、 緊縮経済政策手段の硬直性、国内債務危機を引き起こす高金利政策、 緊縮政策と金融再建早期達成の矛盾、 バランスを欠く自由化政策と言った問題を提起し、その改善策を提案する。
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