No.8 : 情報化がマクロ経済に与える影響
研究員 松平 Jordan
1997年4月
要旨
- 最近のマスコミでは、「情報化が停滞している日本の経済を救う」 あるいは「現在の日米成長格差は情報化格差によるものなのだ」 というように、情報技術(IT)関連の投資が経済成長に 大きな影響を与えているという趣旨の議論が多い。 しかし、 日本における従来の議論はITをアウトプットとして理解しているため、 財とサービスを提供するためにIT資本がどれだけ貢献しているかという 問題を正確に分析することはできない。 経済生産活動へのITの貢献度を明らかにするためには、 ITをインプットとして捉えた分析が必要である。 本稿では、このような問題意識に基づいて、 成長会計の手法を用いてITのマクロ経済的の影響を把握することを 目的としている。 本稿の中心テーマはITが日本経済へ与える影響だが、 日米比較もあわせて行った。
- 日米両国において、実質IT投資は1970年から1990年まで確実に伸びてきた。 しかし周知のとおり、 1991年頃に日本はバブル崩壊後の不況に陥ったために、 IT投資は、その絶対金額も非住宅投資に対する比率も、 米国に比較すると低下した。
- 日本においては、1990年代に入ってフローのIT投資額が減少したが、 投資額はIT資本の償却額 よりは多かったために、 伸び率は低くなったものの、ストックとしてのIT資本は増加を続けてきた。 したがって、ITがまだ経済成長に寄与していることは明らかである。
- 時系列的に見れば、日米におけるITの成長率への貢献度については、 大きな差は存在しない。70年代には、ITの経済成長への貢献度は、 日本では0.31%、米国で0.25%であり、総成長率のうち、 ITで説明可能な部分はそれぞれ9.25%と7.31%であった。 そして80年代には、ITの経済成長への寄与度は日本0.46%、米国0.35% (総成長率のうち、それぞれ13.20%と15.42%)へと増加した。
- 近い将来の日本の経済成長に対するITの寄与度は、 マスコミで言われているほど大きくはないと思われる。 近年の多額のIT投資にもかかわらず、 非住宅資本ストックに対するIT資本の比率は いまだ低レベルにとどまっている。 1993年時点で米国では11.7%なのに対して、日本はまだ8.6%でしかない。 今後ITが経済成長にある程度貢献するのは間違いないとしても、 経済活動へのインプット全体に対するIT資本の比率が小さいために、 あまり大きな貢献は期待できない。
- ITの寄与度が他の要素の寄与度より小さいために、 経済成長率の日米格差を情報化の違いだけで説明することはできない。 92年と93年の日米の経済成長率の格差は平均2.0%であるが、 このうち情報価格差によって説明できるのは、成長率格差の3割程度、 すなわち約0.7%であると思われる。
