No.5 : 90年代に前半における日米経済の構造比較
—日本経済「繁栄の中の停滞」に関する研究—
主任研究員 栗原 潤
1997年3月
要旨
- 安定的な拡大基調にある現在の米国経済と、 「バブル崩壊」による調整を経て回復に転じたものの 緩慢な日本経済とは正しく対照的である。 日本経済「繁栄の中の停滞」の根本的要因は何か。 本研究では、日米比較を中心に、日本経済の動向を、 循環的・構造的・政策的側面から分析した。
- 循環的側面から見れば、日本の「バブル崩壊」の規模・期間は 米国のそれよりも大きく且つ長く、 また「バランス・シート」調整、資本ストック調整の規模・期間も異なり、 不良資産処理の対応にも相違があったため、 米国では比較的短期間で終結したのに対し、 日本では今尚不安定要因として残存している。
- 構造的側面として、「情報化」・「国際化」に対する 日米の対応に関する差が指摘される。 米国では情報化投資が積極的に実施され、 「情報化」のための資本ストック面では日本が米国に 完全に水を開けられた感がある。 また、現在における「国際化」は、「地理的・時間的制約」を 解き放つ経済活動の同時的・地球的拡大と理解できるが、 米国では国境を意識しない内外の多国籍企業が、 適材適所・適地適産を地球的規模で実現すべく直接投資を 内外で活発化させている。
- 政策面では、ヒト・モノ・カネ・情報の「ネットワーク」が 構築・ 利用可能な、 透明度の高い制度的基盤の確立に関する日米間の差が指摘される。 米国では国際間・業種間の垣根、業種内の規制という 「政策的・制度的制約」を必要最小限にとどめる政策的努力が なされている。 翻って日本は規制緩和・国際的調整に関して正しく緒についたばかり、 という感が強い。
- 現在は、国際的生産「ネットワーク」・国際間比較優位構造の再編を 通じた国際的メガ・コンペティション時代である。 従って、「時空的制約」を軽減させると共に「情報識字力」を要求する 「情報化」というテクノ・パラダイム・シフトを的確に把握し、 「透明性・双方向性」、「異質性・国際性」を重視した、 高新陳代謝体質の産業構造・産業組織に日本経済を転換する必要がある。 こうした努力を怠り、またフルセット型・自己完結型経済に固執すれば、 国際的「ネットワーク」から外れ、 日本経済自身の長所を伸ばし欠点を補正する機会を失い、 世界の中で「井底の蛙」に陥る危険性が高い。
