No.2 : 日本経済の高コスト構造とその克服への展望
主任研究員 米山 秀隆
1997年3月
要旨
- バブル崩壊後、 日本経済の構造改革を推し進めるべきだとする主張が 一貫してなされてきたが、構造改革の具体的な中味の一つとして、 中間財の高コスト構造を是正すべきであるとする意見が強くなっている。 海外からの調達や海外への生産移転などグローバルネットワークの形成が、 国内中間財の高コストを回避する形で現れており、 それが国内産業の空洞化を招いている点に、 現在の高コスト問題の本質がある。
- 中間財のうち、運輸、通信、石油・石炭製品、電力などの 産業インフラについては、これまで生産性が向上しない分、 価格を上昇させてきたため、高コスト構造が温存されてきた。 これらの分野では、参入規制や排他的取引慣行に守られて、 価格を値上げしやすい状況にあった。 しかし、最近では、海外から割安な中間財を調達する動きが広がっており、 価格が国際的な水準に向かう大きな圧力となっている。 日本が今後とも国内において産業の集積を維持しようとするならば、 ビッグバン形式で様々な規制を一括して撤廃し (「産業インフラビッグバン」)、 産業インフラの国際競争力を確保していく必要がある。
- 土地については、ファンダメンタルズの違い (特に、土地生産性の高さ、保有税の実効税率の低さ)によって、 諸外国との地価格差をある程度説明できる。 しかし、今後については、需給構造の変化、 海外への生産移転による国際水準への均等化圧力などによって、 格差は縮小に向かう可能性が高い。 政策的には、保有税の実効税率を相応の水準に維持することにより、 地価を国際的な水準に近づけていくことなどが必要となる。
- 労働力については、85年以降の円高の進展が高コスト構造をもたらしたが、 現在までのところ、東アジア諸国からの低付加価値製品の輸入増加が、 日本の製造業の賃金の引き下げ圧力になっているとまではいえない。 これは高賃金を生産性の上昇によって対応してきたためである。 しかし、今後については、生産性の上昇で対応できる保証はなく、 賃金が低下する可能性は否定できない。 これを避けるためには、 高コスト労働力を吸収しうる産業構造に転換を図ることが重要となる。
