No.19 : 公共セクターの役割とその再検
立命館大学助教授(FRI経済研究所公的セクター研究会委員) 小塩 隆士
1997年10月
要旨
- 本稿の目的は、公的セクターの機能に関するこれまでの理論的な議論を整理し、 公的セクターの役割を再検討することである。 本稿の論点は次の3つに要約される。
- 第1に、「市場の失敗」を論拠とした公的セクターの存在理由の説明は、 絶えず見直していく必要がある。 「市場の失敗」の内容は経済的な与件の変化によって変質するからである。 公的介入の根拠を「市場の失敗」に求めようとする場合には、 (1)本当に「市場の失敗」が存在するのか、そして、 (2)仮にその存在が認められたとしても、 その弊害を公的介入によってどの程度軽減でき、 また、そのためにどの程度のコストが必要になるのか、 という点をつねに認識しなければならない。
- 第2に、マクロ経済政策の有効性についても再検討が必用である。 特に、公共投資政策については、経済全体の生産性の向上に つながっていない可能性もあり、 供給サイドから見た見直しが必要となっている。 また、高齢化・少子化の進展は、 財政政策の効果を世代ごとに評価する重要性を高めている。
- 第3に、公的セクターの役割の再検討に際しては、公共選択の理論、 エージェンシー理論やニュー・パブリック・マネジメント(NPM)理論からの アプローチが有用である。ただし、実際の行政改革を進めるに当たっては、 これらの理論の一つだけに依存することはできず、 複眼的なアプローチが必要となる。
