No.15 : アメリカにおける金融仲介の変貌について-「市場化」の進展と国際金融システム-
茨城大学助教授(FRI経済研究所研究会委員) 勝 悦子
1997年4月
要旨
- 近年アメリカにおいては、伝統的金融仲介のシェアが時系列的に低下し、 替わって、ファイナンス・カンパニーや、 ミューチュアル・ファンドを通じた金融仲介の台頭が顕著となっている。 こうしたマネーのチャネルの多様化によって、 80年代末にわが国同様金融システムの脆弱化を経験したアメリカでは、 80年代入り後も極端な景気後退に陥ることなく、安定成長を維持した。
- 近年のミューチュアル・ファンドの劇的な増大の主因は、 90年代入り後実質金利ゼロという状況で、 定期性預金から資金がシフトしたこともさることながら、 年金基金の運用増大が大きく作用した。 アメリカの年金基金は、公的年金よりも私的年金のシェアが高く、 近年では確定給付型から確定拠出型にシフトしている。 なかでも、401(k)プランという確定拠出型年金の残高が急増しており、 運用もハイリターン志向が強まっている。とりわけ複数の投資対象を持ち、 自由に投資対象を変換できるプランを有するミューチュアル・ファンドは、 こうした年金運用のニーズにまさに合致するものであった。
- わが国では、96年11月に第二次橋本政権のもと、 金融ビッグバン構想が発表された。 その内容は2001年までに東京市場をニューヨーク、 ロンドン並みの国際市場に再生するため、 市場原理を基軸とした透明な市場を構築するとされている。 なかでも国民の金融資産を有利に運用するため、 資産運用業務規制の見直しや、年金運用の弾力化、 投資信託の免許制から登録制への移行などが実施に移される 見通しとなっている。
- これら諸措置により、わが国においても、金融資源の最適配分がなされ、 また年金基金運用においても市場原理が働く自由な市場になることが 期待される。 しかし一方で、 金融の国際化や金融の機関化が国際金融システムにも大きな影響を 与えることも懸念されている。 かかる環境で、国際的システミック・リスクへの事前的備えが益々 重要になってきている訳で、各国金融業務の法制面での平準化に加え、 会計基準、ディスクロージャー規準の平準化など、 国際的なルール作りが喫緊の課題となっている。 BISのマーケット・リスク規制もこうした流れに添うものであるが、 国際的な規制の調和をチェックするような国際的な機関の設立も一考に 値しよう。
