No.11 : 東アジアの貿易・投資と相互依存経済について
研究員 荒井 崇
1997年4月
要旨
- 東アジア(NIES、ASEAN、中国)地域の発展により世界経済の比重は、 今日大西洋地域から太平洋地域ヘシフトしつつある。 とくにこの東アジア地域においては1960年代の日本、 70年代からのNIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)、 さらに80年代後半からはASEAN諸国(タイ、マレーシア、インドネシア)、 90年代からの中国へと連鎖的に高成長がつづき、 今や「世界の成長地域」と名づけるに相応しい地域となった。
- この地域は積極的な輸出志向工業化政策の下で、 輸出と投資の好循環メカニズムを展開させ、 他地域では類例のない高い経済実績を実現してきた。 東アジアの開発戦略つまり「輸出志向工業化」政策の下、 域内貿易と域内投資とが好循環メカニズムとして作用し、 経済成長とともに域内における生産分業の進化に貢献している。
- 東アジアの高度経済成長は、 当然ながら各国の産業構造の高度化をもたらし、 これにより東アジア地域諸国は各々の発展段階の相違を うまく噛み合わせる形で、 ダイナミックな相互依存関係を構築してきている。 この相互依存関係の把握のために、 国際産業連関表による計量的な分析を行い、 生産誘発額、生産誘発係数、生産誘発の対外依存度を計測し、 国・産業間における波及関係と相互依存度を数量的に示す。
- 域内相互依存関係の進展は、 東アジア諸国の産業構造の高度化をもたらした。 この産業構造変化の実態を明確にするために、 スカイライン・マップ分析を行う。 スカイライン・マップの創案者であるレオンチェフは、 経済規模が大きくなるほど、経済が発展するほど、 一国の経済は自給率の高い「完成した体系」に近づくと解釈した。 逆に経済規模の小さい国は、 経済が発展しても一国だけで完成された体系を形成することには 限界があり、他国との補完関係を通して完成された経済体系に 近づくと考えた。 ここでは東アジア諸国のスカイライン・マップ分析を通じて この命題に迫り、この地域諸国の経済構造の特徴を浮かび上がらせる。
- 円高を契機に東アジア地或の経済関係はダイナミックな転換を 引き起こした「日本効果」を中心に、日本、NIES、ASEAN、 中国と続く構造転換連鎖構造を明示する。
