No.1 : 香港返還と香港経済の行方
主任研究員 朱 炎
1997年3月
要旨
- 英国の植民地である香港は、1997年7月1日に中国に返還され、 中国の特別行政区になる。返還に伴って、 香港は今後も経済発展を続けられるか、国際金融センター、 貿易センターなどの機能を維持できるかが、香港内外から懸念されている。
- 香港はこの数十年間、輸出志向型の経済発展を遂げ、 国際金融センターや貿易センターの地位を築き上げた。 近年、生産コストの上昇によって製造業が中国に移転することに伴い、 産業構造のサービス化が進み、金融センンター、 貿易センターの機能が強化された。 しかし、香港経済はさまざまな構造問題も抱えている。
- 香港経済の繁栄には、自由な経済制度と 自由競争の経済環境の存在が最も重要である。 また、旺盛な起業家精神と勤労意欲、豊富なビジネス人材、 整備されたインフラ施設など、優れたビジネス環境も大きく貢献している。 さらに、外部環境として、高成長が続く中国との経済関係の緊密化によって、 香港経済はさまざまなメリットを享受している。
- 返還後、中国は自らの利益を考慮し、香港経済の繁栄を維持するため、 香港の自治、自由な経済制度を維持するであろう。 返還後の香港経済に起こりうる変化は、返還自体がもたらす変化のほか、 抱えている構造問題に対処し、 外部環境の変動に対応することで生じる変化もある。 返還後の香港経済に関しては、(1)経済的役割を維持しながら発展する、 (2)中国経済に組み込まれる、(3)中国の介入で活力が失われる、 という三つのシナリオが考えられる。 短期では(1)、長期では(2)の可能性が大きいが、(3)の可能性は小さい。
- 日本は、香港との緊密な経済関係を持っている。 日本企業は、香港の国際金融センター、 貿易センターなどの機能を十分に活用している。 香港経済の安定と発展が維持されれば、日本も利益を得ることができよう。
