総合窓口に関するアンケート調査
発刊日:2007年4月
株式会社富士通総研
調査の目的
従来、行政サービスを受ける際には、そのサービス内容ごとに役所の窓口や電話など、受け付ける窓口を使い分けることが多かった。しかし、最近では電子自治体の進展による庁内情報化やBPRにより、住民サービス向上の観点から、一つの窓口で複数の手続きを行えるように窓口業務の改革によって庁内の窓口の一元化を図り、各種行政サービスを一個所で受けられるという、いわゆる「総合窓口」を設置する自治体が増えてきている。さらに情報キオスク端末や郵便局、コンビニエンスストアなどを新たな行政サービスの窓口として活用している自治体もある。
さらに自治体のホームページ上に、行政サービスの内容をまとめたページを設け、申請書のダウンロードや電子申請が行えるなど、手続き情報の入手から申請・届出までITを通じてワンストップで行える自治体も出てきている。一方で、ITを使ったサービスの提供は、ITを使う住民と使わない住民との間に情報格差(デジタルデバイド)を発生させる懸念から、行政サービスの相談や案内を総合的に行うコールセンターを設置している自治体も出てきている。
そうした様々な形での窓口が増える一方で、未だ総合窓口に至っていない自治体も数多いのも実態であり、自治体が総合窓口を行えない課題も数多く存在している。果たして、住民をたらい回ししない、いわゆる「総合窓口化」や、「土・日の開庁」は、全国自治体でどこまで進んでいるのだろうか。「総合窓口化」が進んでいない理由として、フロアーの狭さ、組合の反対、戸籍電算化の遅れ、予算の確保等があげられるが、一番の原因はどのような理由なのだろうか。「自動交付機の設置」は、どの程度進んでいるのだろうか。
そこで、本アンケート調査では、こうした問題意識に基づいて、各自治体の総合窓口の取り組み実態を把握するため、全国の政令指定都市、一般市、特別区(対象:802自治体)を対象にアンケート調査を実施し、その結果に基づいて「総合窓口」を推進するための具体的な対応策を検討した。
調査の実施概要
- 対象自治体:政令指定都市、一般市、特別区の自治体
- 調査対象者:住民窓口担当部門
- 調査方法:質問紙郵送法
- 実施時期:2006年6月26日(月曜日)~7月7日(金曜日)
- 回数率:48.6%
| 自治体区分 | 対象数 | 回収数 | 回収率(小数点第2位は四捨五入) |
|---|---|---|---|
| 政令指定都市 | 15 | 6 | 40.0% |
| 一般市 | 764 | 372 | 48.6% |
| 特別区 | 23 | 12 | 52.2% |
| 合計 | 802 | 390 | 48.6% |
- 主要な設問:

- 総合窓口について
- 戸籍の電算化について
- 自動交付機について
調査結果の概要
1.総合窓口の設置状況
自治体の総合窓口に関する設置状況を尋ねたしたところ、「設置している」と回答した自治体は、全体で33.3%と約3分の1に当たる。但し、アンケート調査に回答した自治体は、もともと総合窓口に関心を抱いている自治体が多いと推察されるため、多少割り引いて見る必要がある。
具体的に見てみると、人口規模別では、人口10万人以上30万人未満の市が35.0%で、5万人以上10万人未満の市が26.8%と少ないが、5万人未満の人口規模が小規模の自治体では34.6%となっていた。このことから、「人口規模が小さい自治体ほど、総合窓口の設置は少ない」というわけではない。
さらに、人口30万人以上の一般市では55.6%と、総合窓口の設置率が高い。逆に政令指定都市では33.3%が検討を行ってはいるが、すでに設置しているところは0%との回答であった。(図表A参照)。
図表A. 総合窓口の設置状況
(自治体の人口規模別:SA)

出所:「総合窓口に関するアンケート調査」(富士通総研)
政令指定都市で「総合窓口」の導入が進んでいないのは、政令指定都市では、窓口で扱うサービスを本庁ではなく市内の区役所が担当していることから、本庁では、直接、窓口サービスをほとんど実施していないため、本庁では「窓口サービスは区役所の管轄である」という意識、現場の区役所は「本庁の指示通りに、窓口サービスをこなせばよい」という感覚に陥り、一種の縦割り行政が弊害となって、総合窓口を設置する動きにまでは至っていないのではないかと考えられる。
2.総合窓口が設置されている自治体の窓口サービスの内容
「図表A.総合窓口の設置状況(自治体の人口規模別)」で「すでに総合窓口を設置している」と回答した自治体(33.3%)に対して、「総合窓口での業務内容」に関する質問をしたところ、行政サービスとして提供している窓口サービスの内容に大きな差があることがわかった。
具体的には、住民票関係、戸籍関係、印鑑証明関係、外国人登録関係の4項目については、対応率が90%を超えた。そのほか、国民健康保険に関する手続きは80.0%、税金の証明書発行などの業務は73.1%と対応率は比較的高い傾向である。
一方で、国民年金の手続きができる総合窓口は60.8%、転校や入学の手続きなど教育委員会関係の手続きができる総合窓口は57.7%に留まっている。さらに、逆に個別の対応が必要な福祉関係等の申請給付事務などの福祉関係、保育関係、税収納など複雑な個別の対応が必要と思われる業務は、総合窓口での対応率はさらに低い傾向である。(図表B参照)
図表B. 総合窓口が設置されている自治体の窓口サービスの内容(MA)

出所:「総合窓口に関するアンケート調査」(富士通総研)
(注)○がついている項目は、「国民健康保険加入者で小学生の子供がいる転入してきた住民」が窓口で行わなければならない事務手続き住民異動届、国民健康保険の異動届、国民年金の異動届、学校指定の手続きの4つの手続きで、矢印はその差である。
この結果から、多くの自治体で、「総合窓口」を設置していると認識しているにもかかわらず、ワンストップで自治体の窓口で手続きが完結していない現状が明らかとなった。例えば、「国民健康保険加入者で小学生の子供がいる転入してきた住民」は、主に自治体の窓口で、住民異動届、国民健康保険の異動届、国民年金の異動届、学校指定の手続きの4つの手続きが必要になるが、その手続きが窓口サービスとしてどのように対応されているかを検討した場合、住民票関係(98.5%)と教育委員会関係(57.7%)の対応率の差は、40.8%にも及んでいる。つまり、「総合窓口」を設置していると認識している自治体の4割で、ごく一般的な転入時の手続きがワンストップで行えない実態があることがわかった。
このことは、同じ「総合窓口」でも、自治体間の窓口サービスの内容に大きな格差があるように考えられる。こうした窓口サービスの内容の格差を解消し、全国の自治体で窓口サービスのワンストップ化のレベルを高めていくためにも、総合窓口に関するガイドラインの作成などを通して標準的な総合窓口とは何かといった定義を固めることが求められる。
3.総合窓口以外の窓口サービスの取り組み
(1) 総合窓口を設置している自治体における総合窓口以外の窓口サービスの取り組み
「図表A.総合窓口の設置状況(自治体の人口規模別)」で「すでに総合窓口を設置している」と回答した自治体(33.3%)に対して、「総合窓口」以外の窓口サービスとして、どのような取り組みが行われているかを尋ねてみた。
一番多かったのは、フロアー案内係の配置(43.1%)、接遇研修の強化(42.3%)、平日の開庁時間の延長(40.8%)と、窓口で行われている行政サービスの業務の見直しを行わなくても可能な取り組みが比較的多かった。
一方で、自治体職員の勤労条件に大きく係るが、自治体で住民が窓口で一番待たされる時期である3、4月繁忙期の土・日曜日開庁(19.6%)などの取り組みは、比較的少なかった(図表C参照)。
図表C. 総合窓口以外の窓口サービスの取り組み
(総合窓口を設置している自治体:MA)

出所:「総合窓口に関するアンケート調査」(富士通総研)
(2) 総合窓口の設置を予定していない自治体における総合窓口以外の窓口サービスの取り組み
「図表A.総合窓口の設置状況(自治体の人口規模別)」で「総合窓口を行う予定はない」と回答した自治体(51.3%)に対して、同じく「総合窓口」以外の窓口サービスとして、どのような取り組みが行われているかを尋ねてみた。
一番多かったのは、「すでに総合窓口を設置している」と回答した自治体(33.3%)と同様に、フロアー案内係の配置(43.0%)、接遇研修の強化(43.0%)、平日の開庁時間の延長(36..0%)と、窓口で行われている行政サービスの業務の見直しを行わなくても可能な取り組みが比較的多かった。
一方で、自治体職員の勤労条件に大きく係るが、自治体で住民が窓口で一番待たされる時期である3、4月繁忙期の土・日曜日開庁(19.5%)などの取り組みは、比較的少なかった(図表D参照)。
図表D. 総合窓口以外の窓口サービスの取り組み
(総合窓口の設置を予定していない自治体:MA)

出所:「総合窓口に関するアンケート調査」(富士通総研)
4.総合窓口を推進するに当たって苦労した点
「図表A.総合窓口の設置状況(自治体の人口規模別)」で「すでに総合窓口を設置している」と回答した自治体(33.3%)に対して、「実際に苦労した点」についても尋ねてみた。比較的多い回答としては、業務マニュアルの整備(39.2%)、職員研修の実施(36.2%)といった実際の運営に関連する項目と、庁舎内フロアーの改修(36.2%)、再配置計画の作成・スペースの確保(29.2%)という物理的な制限に関する回答が目立っていた。
一方、「電算システムの開発」を挙げた自治体は22.3%だった。さらに、「予算(事業費)の確保に苦労した」と回答した自治体は、14.6%と、予想に反して比較的少なかった(図E参照)。
図表E. 総合窓口を推進するに当たって苦労した点
(総合窓口を設置している自治体:MA)

出所:「総合窓口に関するアンケート調査」(富士通総研)
5.総合窓口化を推進しない理由
「図表A.総合窓口の設置状況(自治体の人口規模別)」で「総合窓口を設置する予定はない」と回答した自治体(51.3%)に対して、実施しない理由についても尋ねてみた。一番多かったのが、「スペース確保が必要(65.0%)」で、次いで「フロアーの改修(57.5%)」となっている。つまり、庁舎の構造、フロアーの改修という物理的な問題が、総合窓口導入の最大のネックとなっているようである。さらに、「予算(事業費)の確保(46.5%)」が半数近くに達していた。そのほか、「電算システムの開発(31.0%)」、「職員研修の実施(22.5%)」となっている(図表F参照)。
図表F. 総合窓口を推進しない理由
(総合窓口を設置している自治体:MA)

出所:「総合窓口に関するアンケート調査」(富士通総研)
6.自動交付機の導入状況
自治体で住民票の写しや印鑑証明書などを発行する自動交付機に関する導入状況を尋ねたところ、自治体の人口規模が大きいほど、自動交付機の導入比率は高く「すでに導入されている」という回答が多かった。
一方で、5万人以下の一般市においては、「自動交付機導入を行う予定はない(88.4%)」と回答している。(図表G参照)。
図表G. 自動交付機の導入状況
(自治体の人口規模別:SA)

出所:「総合窓口に関するアンケート調査」(富士通総研)
このことから、自動交付機を購入する財政的負担が可能な人口規模の高い自治体でしか、導入が進んでいないこということがわかった。
7.総合窓口の設置と自動交付機の導入の関係
総合窓口の設置と自動交付機の導入の関係を調べてみたところ、「すでに総合窓口を設置している」と回答した自治体(33.3%)では、31.5%が自動交付機を既に導入していた。
一方、「総合窓口を設置する予定はない」と回答した自治体(51.3%)で自動交付機を導入済みの自治体は18.5%にとどまり、「今後も自動交付機を導入する予定がない」と答えている自治体は70.0%に達している。
さらに、回答が得られた全自治体で「今後も自動交付機を導入する予定がない」と答えている自治体は62.6%に達しており、「総合窓口を設置している自治体で導入予定がない」と答えた58.5%を、かなり上回っている。総合窓口の設置に消極的な自治体は、自動交付機導入にも消極的、という傾向が見える(図表H参照)。
図表H. 総合窓口の設置と自動交付機の導入状況の関係(SA)

出所:「総合窓口に関するアンケート調査」(富士通総研)
自動交付機の導入と総合窓口の設置の関連については、財政的な問題なのか、住民サービスについての意識の違いなのか、あるいはその両方なのかといった問題について、今後、自治体の財政状況と窓口サービスの充実度との関連として調査していく必要がある。
調査結果に基づく提言
今回のアンケート調査の結果から、多くの自治体に、本来の総合窓口化を推進させていくためには、次のことが求められる。
第一に、「総合窓口」に関する定義を確立することである。全国の自治体間では、「総合窓口」の捉え方に、かなり幅があることがわかった。その結果、相当数の住民が未だにたらい回しされているにも関わらず、自治体では「総合窓口化して便利になった」と認識しているケースが多数存在しているのが実態である。
このため、住民にとって便利な窓口改革を進めるためにも、住民の誰でもが「総合窓口」ということの共通認識ができるように、窓口サービスである窓口の事務手続きの範囲を明確にすることが必要ではないだろうか。例えば、住民が手続きを行う視点に立ち、住民異動に伴う窓口サービスとして、(1)戸籍届出・住所変更・住民票などの交付、・印鑑登録・印鑑証明書交付、国民健康保険(資格取得・喪失)関係、国民年金・老人医療(届出等)・介護保険・児童手当・乳幼児医療業務などの窓口サービス、(2)税証明の交付、(3)転入時の学校の指定に必要な手続き等の内容が含まれるべきといった、具体的に窓口で取り扱えるサービス内容の範囲を明確にすべきである。
第二に、「スペースの確保」は住民第一で考えることである。今回のアンケート調査で、総合窓口を推進することを断念している自治体の多くが「スペースの問題」をあげている。しかし現状の事務スペースを維持すること前提とせず、住民の視点から、総合窓口の「スペースの確保」の検討を行うことが必要である。
例えば、(1)相当数の自治体には、1階に市民ホールや展示用の遊休スペースがあるので、それを活用すること。(2)「総合窓口化」すると、一般に住民の滞留人数は減少する。総合窓口に必要な面積と、総合窓口化後の「待合」に必要な面積を比較して、「待合」のスペースの縮小が可能かどうかを検討すること。(3)1階フロアーに余裕がない場合は、会議室や総合窓口と関連性の薄い部署を移動させて面積を確保することなど、自治体の組織体制や従来の慣行にとらわれない工夫次第で「スペースの確保」は可能である。
第三に、投資対効果に基づいた「予算の確保」を検討すべきである。今回の調査結果から、総合窓口の推進を断念している自治体の多くで、その原因として「予算の確保」を挙げている。長期的な視点で費用対効果に基づく「投資」の考え方に立ち、同時に事務手続きの共通化・標準化による業務改善を行うことで期待できる人員削減効果を検討したうえで予算の確保を行うべきである。
例えば、すでに「総合窓口」を実施している佐賀市役所の場合、市民税や保険年金に関係する部署から3人を配置転換している(人員削減効果)。さらに、総合窓口に業務を集中化させ、人員配置のスケジュールも時間単位に管理し、ローテーションによる組織対応を行うことによって、残業代も減少している。
第四に、自治体間での情報の共有化を進めることである。今回のアンケート調査の結果から、すでに総合窓口を設置している自治体が苦労した要因と、総合窓口化の推進をあきらめた自治体が実施の障害として挙げている要因はかなり類似していることがわかった。このことは、すでに苦労を乗り越えた自治体のノウハウを、今後、総合窓口化を推進していく自治に共有できる仕組みがあれば、総合窓口化の推進をあきらめた自治体に対して、「総合窓口」を推進していく材料として大きく役立つものと考えられる。
共有するノウハウとしては、例えば(1)総合窓口化の検討の手順、(2)業務マニュアル、(3)研修マニュアル、(4)フロアーの改造の事例、(5)総合窓口化を支援する総合窓口案内支援システムの事例などがあげられる。
富士通総研では、今後とも、全国の自治体に対して、本来の総合窓口化の推進させていくため、上記の点に対する研究を進めていく予定である。
調査問い合わせ先
株式会社富士通総研
担当 瀧口、木下
電話 03-5401-8396
関連コンテンツ
PDF 総合窓口に関するアンケート調査の集計結果 [1,022 KB]
PDF 総合窓口に関するアンケート調査票 [462 KB]
