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日本における内部統制の現状に関するアンケート調査

発刊日 : 2007年2月
株式会社富士通総研 経済研究所

調査の目的

昨年6月に証券取引法が改正され(名称は「金融商品取引法」に改題)、上場企業は内部統制システムの整備や内部統制報告書の提出を義務付けられるようになりました。11月下旬には金融庁から実施基準の公開草案が発表され、2008年度決算からの適用に向けてわが国の企業でも対応が進んでいます。

一方で、2004年にSOX法が施行されたアメリカでは、企業に対するコスト負担などが大きな話題となり、中堅中小企業に対する条件の緩和も検討されています。わが国でも、横並び的な意識で内部統制強化を進めるのではなく、コストパフォーマンスも考慮しながら実効性のある取り組みを進めることが求められます。

そこで、株式会社富士通総研では、「内部統制とITに関する研究会」(座長:情報セキュリティ大学院大学 副学長 林 紘一郎 教授)を開催し、日本における内部統制のあり方について研究してきました。そして、その研究会において、日本企業における内部統制関連制度の認知度および取り組み状況の実態を明らかにすることを目的として、上場企業および上場企業の社員を対象としたアンケート調査を実施しました。この度その集計結果がまとまりましたので、報告いたします。今後は、この調査結果の分析などにもとづいて、日本における内部統制に関する課題を抽出し、解決策を提言していく予定です。


調査の実施概要

A. 上場企業向け調査

1 調査時期 2006年9月
2 調査方法 郵送配布、郵送およびウェブで回収
(調査実施は株式会社日経リサーチに委託)
3 調査対象 上場企業3,691社
4 有効回答数 814件(回収率22.1%)

B. 上場企業の従業員向け調査

1 調査時期 2006年8月
2 調査方法 インターネットリサーチ
(調査実施は株式会社マクロミルに委託)
3 調査対象 上場企業およびその子会社の正社員
4 有効回答数 2,060人

調査結果の概要

1. 内部統制に関する取り組みと認知度の現状

上場企業向け調査で内部統制に関する取り組みの状況についてきいたところ、「実施している」という回答が全体の50%を超えていたのは、「セミナーなどに参加して情報を収集」「社外のサービス提供者(監査法人、コンサル会社など)に相談」「責任者あるいはリーダーを任命」の3項目であった。また、どの項目についても従業員数の多い企業の方が少ない企業よりも実施率が高くなっており、取り組み状況は企業規模と明確な関係があることがわかった。(図表A参照)。

図表A. 内部統制に関する取り組みの現状(企業規模別)

図表A

上場企業の従業員向け調査の中で「コンプライアンス」という用語の認知度を尋ねたところ、全体としては「知らない」という回答は12.5%で、ある程度理解が進んでいることがわかった。しかしこれを回答者の所属部署や役職別に集計すると、たとえば所属部署別では製造・生産部門では23.1%が「知らない」と回答しており、役職別でも「知らない」と回答している一般社員は18.8%にのぼる(図表B参照)。このことから、企業の現場までコンプライアンス意識を浸透させることが重要な課題であると言えるだろう。

図表B. 「コンプライアンス」という用語の認知度(回答者属性別)

図表B

2. 内部統制の取り組みに関する論点

内部統制およびその評価は法令で必要とされていることであるが、企業としてはそれにともなうコストを考えないわけにはいかない。特に資金や人材に制限の多い中堅中小企業にとっては、文書化作業のための人件費やコンサルティング会社などへの支払いは大きな問題となる。今回の調査でも、従業員の少ない企業ほど、内部統制について「多少のコストをかけても高いレベルを達成したい」という回答の比率が少なく、「あまりコストをかけずに最低限のレベルは確保したい」という回答が多くなっている(図表C参照)。

図表C. 内部統制に関する取り組みの姿勢(企業規模別)

図表C

内部統制の強化については、コストがかかること以外にもいくつかの課題や疑問点がある。第一に、個人情報保護法をめぐる企業の対応にもそのような傾向があったと思われるが、法制度に対応するために一時的に、場合によっては過剰と思われるほどの対応をしながら、それはあくまで形式的なもので、年月の経過とともに取り組みが形骸化してしまうという危険性である。また、内部統制の強化は日常業務を可視化する必要があり、効果的に取り組めば業務改善にもつながるものの、ともすれば日常業務の遂行を妨げてしまう。内部統制の目的の一つとして業務の効率的な遂行が挙げられているにもかかわらず、内部統制の取り組みのために業務の効率が下がる可能性がある、という問題である。そして、金融商品取引法が「日本版SOX法」と呼ばれる場合があることからもわかるように、日本の制度はアメリカのSOX法を参考にしたものであり、アメリカとは文化や風土が異なる日本の企業にアメリカ型の制度を導入しても、本当に意味があるのかという疑問もある。アメリカ型の内部統制は社員の不正を防止するものだが、それを過度に徹底すると社員間の信頼を損なってしまう危険性もあるのではないだろうか。

今回の企業向け調査でも、「内部統制強化は、業務効率化に反する場合がある」「文書化などを行っても、形骸化・形式化する危険性が高い」という考え方に対して、半数以上の企業が「あてはまる」または「ややあてはまる」と回答している。「米国型制度は日本企業の風土や文化にはそぐわない」という考え方についても、皇帝的な回答の方が否定的な回答よりも明らかに多い(図表D参照)。

図表D. 内部統制に関する疑問点(企業向け調査)

図表D

従業員向け調査でも、「米国型内部統制を日本企業で行っても意味がない」「内部監査は業務効率に反する場合がある」「企業が情報セキュリティを強化すると業務効率が下がる」という考え方に肯定的な回答は、否定的な回答をいずれも上回っている(図表E参照)。

図表E. 内部統制に関する疑問点(従業員向け調査)

図表E

業務効率化と内部統制強化(情報セキュリティ強化を含む)を両立させること、米国型の内部統制ではない個々の企業の実情に合った内部統制を確立すること、一時的で形骸化・形式化しやすいものではなく実効的な取り組みを継続させること、これらが日本企業にとって大きな課題である。

3. 内部統制の構成要素の実効性

内部統制に関する実効的な取り組みとは何かをいうことを探るために、調査で収集した「将来自社で不祥事が起こるリスク」に対する回答が、内部統制の構成要素に関する取り組みとどのように関係しているかということを分析してみた。その結果、IT全般統制(ITセキュリティなど)を部分的に除けば、「今後当社で不祥事などが起こるリスクは低い」という記述に対して「あてはまる」と回答している企業ほど、どの構成要素についても実施状況が進んでいることがわかった(図表F参照)。

図表F. 不祥事の発生リスクと内部統制の実施状況

図表F

つぎに、5つの構成要素のうちどの要素に関する実施状況がもっとも不祥事発生リスクとの関係が強いかということを明らかにするために、重回帰分析を行った。その結果、統計的に有意な関係があるのは「統制環境」と「業務に関する統制活動」で、そのうち企業風土や社風などの「統制環境」との関係がもっとも強いことがわかった(図表G)。

図表G. 内部統制の構成要素と不祥事発生リスクとの関係

非標準化係数 標準化係数 t 有意確率
β 標準誤差 ベータ
(定数) 0.411 0.215
1.909 0.057
統制環境 0.659 0.100 0.267 6.598 0.000
業務に関する統制活動 0.262 0.069 0.154 3.797 0.000

出所:上場企業向け調査

つまり、内部統制の実効性を高めるためには、文書化やマニュアル整備など個別具体的な業務に関する統制活動とともに、社員全員が共有する経営理念の存在、社員が気軽に上司に相談できる風土や雰囲気、社員が行動の善悪を判断する際の規準となる行動規範の存在など、企業の全体的な統制環境が重要だということである。今回の調査で集めたデータからは、個別の統制活動よりも、むしろ統制環境の影響の方が大きいという結果になった。このことは、アメリカ型の内部統制をそのままコピーして持ち込むのではなく、自社の社風や風土に合った内部統制の仕組みが必要であることを意味している。


調査問い合わせ先

株式会社富士通総研 経済研究所
担当 浜屋、前川、瀧口
電話 03-5401-8392

 お問い合わせフォーム

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