韓国固有の価値観
Chapter5のレポートで語りきれなかったことの一つに、韓国固有の価値観がある。それは少なくとも日本とはかなり異なるものだ。韓国で盛り上がっているビジネスもこうした価値観への理解なしには語れない。机上のビジネスモデルの論理に韓国固有の価値観を足したものが、現在の韓国インターネットビジネスであるといえるだろう。ここではその中でも最も根幹に流れるものの一つである「血縁」について取り上げてみることにする。
従来から韓国では同じ姓で先祖(出身地)が同じ子孫の間での結婚は許されないとする慣習が存在しており、それは法律によっても定められていた。1997年、韓国憲法裁判所がこの法律を憲法に合致しないとするまでは、全く見知らぬ人であっても数百年前の同一祖先の子孫が結婚することは法律上出来なかったのである。韓国では、日本とは違って祖先の姓を勝手に変えたり新たに作ったりしないため、韓国人の姓は三国時代から数百年以上も継承されている。故に日本ほど多くの姓は存在せず、その数270程度だろうといわれている。中でも、金、僕、李、崔、鄭の5大姓だけで、韓国全体人口の約半数を占めるという。韓国では一族の家系は全て管理されており、自分の祖先を30代前まで遡ることも難しいことではない。自己紹介するときには姓とともに祖先を示す出身地を名乗ることは常識であり、そのとき自分と同じ出身で同姓の人とわかれば、あたかも兄弟のような関係が成立するという。例えば、出身地が金海の金氏は400万人程度、慶州の金氏は150万人存在するなど、互いに顔をあわせたこともない一族が同じ一族としての意識を共有しているということになる。
この韓国人の血縁関係と一族意識が政治や企業経営、教育に関する意識にも大きく影響している。選挙でも数十万人、数百万人の一族がそのまま自分の見込み票につながり、これが当選に大きく影響する。企業での採用も同族は優遇され、社長の一族であれば社内での扱いも変わる。小学校等における歴史の勉強にも自分の祖先が登場して、子供たちの話題になる。韓国の学校における歴史教育は、祖先の歴史を学ぶ教育でもあるというわけだ。韓国人は歴史を学ぶことで祖先を知り、現在の自分の存在を認識していく。現在の自分たちのアイデンティティを確認することが韓国人にとっての歴史でもある。
韓国人にとって血縁は生きていく上でのベースであり、社会の様々な集団や組織の中で重要視されるものだ。個人の意識や人間関係を決定する重要な要因にもなっている。当然、ビジネスにおける取引関係や信用も血縁に大きく影響される。ビジネスを進める上でも、同族であることは重要な成功要因の一つとなるのである。韓国ビジネスの根底に流れる固有の価値観の一つとして血族を理解しておくことは、韓国人、社会、ビジネスに関わる上できっと役立つだろう。
