富士通総研

~特許検索~

悲喜こもごもの情報探し

長らくサーチャーをしていると、情報の所在については頭の中にサイトマップのようなものができており、情報収集の依頼があった段階でどこに該当の情報がありそうか大体見当がつくものである。そうはいっても、きっとあるに違いないが即座にイメージの沸かない情報探しも多く、大抵そういう場合は大迷走検索の旅に出ることになる。散々探し回った挙句、実はほんのわずかな知識があれば何の苦もなく探せる情報だったということを知った瞬間、毎度の事ながら徒労感を味わずにはいられない。でも、頭のサイトマップに新たな情報源を書き加えることができるとお宝が一つ増えたようで実に嬉しい。

ありそうでない特許情報

つい最近、一両日中に情報収集をお願いしたいと飛び込みの調査案件があった。内容は特許に関するもので一見したところそれほど手のかからない案件に思えた。特許の検索といっても製品開発などに関わる検索モレが許されない緻密な調査から、他社の特許状況をおおよそ把握できればよいといった一般のビジネス情報レベルのラフな情報と幅が広い。今回の依頼はある業界5~6社の特許申請件数と特許料にからむ収支額について過去5年遡りたいという内容であった。特許の申請件数などは、新聞・雑誌にもある程度公表されているし、特許申請の常連だと毎年のようにランキングで紹介されている。しかしながら、今回の場合は必ずしも大企業ばかりではなく、さらに、時系列にデータを集める必要があったため新聞・雑誌では限界があった。このような場合は特許庁のサイトが有効で、ここで切り口を揃えた時系列の特許件数を検索によって得ることができた。問題はどこかきっとあるに違いない、だが戦略的に公表されていないかもしれないと思われる特許にまつわる収支額であった。データ自体が存在するのとそのデータが公表されているかどうかというのは別次元の問題なのである。

財務知識の必要性

サーチャーとしては情報収集の要望がある以上、たとえ公表されていない情報であっても探した上で、"ない"ということを証明しなければならない。今回の場合、自社の特許によって得た収入、他社の特許利用に対して支払った費用と調査項目は二つに分かれた。実際に検索してみると掲載媒体により特許収支に関わる表現が微妙に違う。DBは機械的に検索作業を実施するのでキーワードが違うと検索されない。前方一致検索を何度か実施し、収入の方は"特許料収入、特許収入、ライセンス料、知的財産関連収入、特許料収支"、また、支出の方は"特許料支払、特許実施料、特許使用料"といった表現が使われていることがわかった。それらの言葉を頼りに複数のDBを検索したが、出てくるのは断片情報ばかりで到底時系列データになりようがない状態だった。それでも何も無いよりはと探し続けたがどうにもまとまらない。商用DBはソースに限界がある。だが、ウェブはソースに限界がない。そこでどこかの誰かがまとめたものがないかとウェブへ媒体を移した。

しばらく調べているうちに探している企業1社を含む複数社の特許収支データに遭遇した。それは証券会社のアナリストによってグラフ化されたもので実数はわからない。だがデータの出典が明記してあった。そこには"出典:有価証券報告書"とあった。そうか、特許の収支にかかわるデータは有価証券報告書に載っているんだと合点がいった。すぐさまEDINETでウェブにあった企業の有価証券報告書を見た。そうしたところ、P/Lの営業外収益のところに確かに"特許料収入"という費目があり、営業費用のところに"特許権使用料"という費目もあった。グラフはイメージなので数値の整合性は取れない。でも、新聞・雑誌に公開されていたその企業の特許収支データとは一致していた。新聞・雑誌では出典について触れていなかったがデータの出所は有価証券報告書と判断できた。

大喜びで、探していた他の調査企業の有価証券報告書も見た。だが、全ての企業が特許の費目を立てていたわけではなかった。営業外収入の"その他"に繰り込まれてしまえばどうしようもない。それと、特許の収入額は公表されていても、支出については公表されていないものが多いこともわかった。確かに有価証券報告書で特許収支について公表されていない企業については、新聞・雑誌にも一切データが出ていなかった。結局調査依頼されたデータ集めは、EDINETはここ1、2年分の財務データしか掲載していないので、調査対象企業のウェブなどをあたりつつ、変則的だがなんとか4社分を揃えることができ、また、それ以外についてはデータが公表されていないという事実を回答として得ることができた。

広く浅い知識

  一見サーチャーの業務にはそれほど関わりのないような財務知識。実は大いに関係があった。情報源を数多く知っていることも重要であるが、知っている情報をどう活用するか、その辺にサーチャーの技がありそうだ。好奇心旺盛にますますの勉強せねばと思わせるできごとだった。