~ドキュメント・デリバリー~
さりげない依頼
調査開始段階で、この30年程前の新聞入手は無理ですと依頼者へ回答することも可能であったが、”急がないし、お金がかかってもいいから”という要望に応えるべく地の果てコースの検索を開始することになった。この段階では、やたらに古い海外の新聞がどこにあるのか全く見当がついていなかったが、ほとんど本能的にこの情報は必ずどこかにあると妙な確信があった。
30年前の新聞記事
お目当ては、1983年8月23日発行のSan Francisco Chronicleの新聞記事。新聞記事の場合は、データベースに収録されていればその場で済む話。まず最初に世界最大を標榜する商用DBのDIALOGで探すがSan Francisco Chronicleの収録は1988年から。もしかしたらさらに古いデータへのチャネルがあるのではとカスタマーサービスへメールで問い合わせたが、見当がつかないといった内容の返事が戻ってきた。それならば本家本元のSan Francisco Chronicle社に聞けばなんとかなるに違いないとこちらも窓口へメールで聞いてみた。でも、お門違いに出したのか何度出しても返事が来なかった。
Newspaper library
雑誌論文ならまだ探す手立てがあるのだが、新聞だとこの辺りが限界。やっぱり無理かと諦めようとして最後の砦を思いついた。そう、ドキュメント・デリバリーの総本山であるBLDSC(The British Library Document Supply Centre)がある。ここへは専門雑誌の論文や学術論文などの複写を頻繁にオンラインでオーダーしている。ただ、古い海外の新聞を所蔵しているかどうかは全く未知の状態。駄目もとのつもりで窓口から新聞の所蔵について聞いてみた。するとすぐさまBLDSCにはNewspaper Libraryというのがあり、そこには所蔵があるという返事が戻ってきて大喜び。早速BLDSCのNewspaper Libraryにアクセスして驚いた。なんと17世紀から21世紀までの世界各国のメジャー新聞52,000タイトルを所蔵してあると書いてある。長らくこの仕事をしているがNewspaper Libraryの存在を記したものを見たことがなかっただけにでかしたと大満足。
ところが、これから先が大変だった。まずNewspaper Libraryの窓口へアクセス。所蔵を再確認し入手したい旨を伝えた。すると入手可能であるが、順を追って手続きが必要だという。フォーマットを郵送するのでそれに必要事項を記入し署名の上送り返して欲しいとのこと。でも、それでは時間がやたらにかかるからメールかファックスで依頼したいとお願いしたのだが、どうやら署名の入った書類が手元に届かないことには何もアクションを起こすことができない仕組みのようで結局フォーマットが届くのを待つことにした。
越年ドキュメント・デリバリー
時期はおりしも暮れで、海外郵便はクリスマスカードシーズンに突入し一年中で一番郵便事情が悪い時期。先方は、フォーマットを送るという連絡を最後に早々とクリスマス休暇に入ってしまった。それが開ければ今度は日本が年末年始。国内の郵便事情も年賀状とバッティングしてこれまた渋滞。結局年内にフォーマットを受け取ることができなかった。流石に年が明ければと思いフォーマットの送付の件をメールで確認したら、年明けは図書館棚卸のため第二水曜日まで休館しているとの自動レスポンスが戻ってきた。なんだか永遠に取り寄せできなそうな予感。
それから数日後、待ちに待ったピンクのフォーマットが届いた。全て手書きで必要事項を記入しサインを二箇所にして送り返した。それからさらに10日くらいたっただろうか。頑丈な紙でできた長さ1メートル以上もある筒がNewspaper Libraryから送られてきた。中を開けてみると、30年前のSan
Francisco Chronicleの新聞記事が出てきた。原紙はマイクロフィッシュにでも収められているのだろう。複写された新聞記事は、文字が読みにくく画質もきれいではなかったたが、駄目もとから一ヶ月、やっと会えたねと思わず頬ずり状態。一ヶ月がかりの年越しドキュメント・デリバリーのお値段は12ポンド、日本円で約2200円。ぶつぶつ言いながら学んだことは実に多かった。
(注1)記事原本の複写を入手すること。
