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サービス評価研究の現在

上席主任研究員 長島 直樹

2009年4月

サービス評価は顧客視点で行うのが常識

サービスには、無形性、消滅性、同時性、変動性といった特徴がある。つまり、形がなく、在庫することができず、生産と消費が同時に行われることが多く、同じサービスでも誰がどのような状況で提供するかによって価値や品質が左右される-といった特徴である。こうした理由から、サービスの品質評価はモノ製品と比べて困難であるとされてきた。

このため、主に1980年代以降、サービス品質やサービスの顧客満足に関する研究が盛んに行われてきた。いくつかの流れがあるが、共通しているのは、「サービスの評価は顧客・利用者の視点によって行われるべきであり、提供企業による自己評価は全くあてにならない」ということである。例えば、2006年に行われたべイン・アンド・カンパニーによる調査は、このことを典型的に示している。これは、362社のサービス提供企業とその顧客を対象として行われたものだが、「提供されたサービスを通じて得られた経験は素晴らしかった」と答えた顧客は8%であったのに対し、80%の企業が、「自社が顧客に対して提供する経験は素晴らしいはずである」と自信を持っていたという。

この意味で、企業サイドの調査研究によって、サービス品質を理解することには限界があり、消費者・最終利用者に関する調査研究が重要であることがわかる。

評価軸は何か

これまでのサービス評価研究は、2つの系統に分類することができる。1つは、パラスラマンらによるアメリカ学派であり、SERVQUALが代表的な手法になる。これは、サービスを信頼性、反応性、確実性、共感性、物的要素の5次元で評価する評価フレームワークである。SERVQUALは、利用者アンケートを中心として、銀行、クレジットカード、長距離電話、修理・保守サービスといった全く種類の異なる4つのサービスについて検証された。特定のサービスに埋没することなく、「サービスは多種多様である」と言われるが故に、何らかの共通性を発見しようとする研究者の問題意識がうかがえる。

実務上も、「異業種のサービスに関する知見では参考にならない」といった意識では、自社サービスの品質向上は覚束ない。例えば、「金融サービス業」というコンセプトを打ち出して、顧客満足・収益性の双方において高水準を維持している巣鴨信用金庫では、金融界で参考になる事例が乏しかったため、リッツ・カールトンなどの工夫を取り入れており、「常にアンテナを高く張る必要性」を強調する。

アメリカ学派に対して、もう1つの考え方はグルンルースに始まるノルウェー学派によるものである。ここでは、サービス品質を、技術品質と機能品質の2次元に分けて考える。前者はサービスがもたらす結果や効果に対する知覚品質、後者はプロセスにおいて感じられる品質と言い換えることができる。この流れに沿って、環境要素を加えた3要因モデルを提唱したのがラストとオリバーである。これも今日も使われる代表的な評価フレームワークの1つである。

近年では、SERVQUALの修正・発展的手法が研究されたり、3要因モデルとSERVQUALの融合が試みられたりして今日に至っているが、サービス評価手法に関しては、未だ決着がついている状況にはない。

ITインターフェースと顧客経験

従来は、サービスと言えば対面のサービス・エンカウンターが一般的であった。しかし、近年はウェブサイトを介したサービス、コールセンター、遠隔医療、各種の自動端末などITがサービス・エンカウンターに介在するサービスが日常生活の中で一般化している。

こうしたサービスを評価するフレームワークの研究はまだ少なく、今後活発化することが予想される。「ITインターフェース・サービスでは、プロセスよりも結果が重要になる」と予想する研究もあった。しかし、富士通総研経済研究所の調査によれば、少なくとも日本の消費者に関しては、ITインターフェース・サービスに対しても、プロセスやインタラクションの満足度を重視しているという結果が得られている。

コールセンター(パソコンに関する問合せ)、価格比較サイト、ATM、家電量販店(来店ベースによるパソコン購入)の4サービスについて、いくつかのプロセスに分けた場合、プロセスごとの満足度と全体満足度に関する調査を一般利用者に対して実施した。家電量販店が従来からの対面サービスであるのに対して、他の3つは代表的なITインターフェース・サービスである。分析結果が示したのは、プロセスの満足度と全体満足度の相関は、ITインターフェース・サービスの方がむしろ高かったということである。また、プロセスの段階を3分割すると、4サービス共通の現象として、序盤はスピード、中盤は知識や能力に裏づけられた確実性、終盤はサービス提供者の配慮や誠意を感じるという意味で共感性が重視されるという結果が得られた。

もちろん、これらの結果を4サービス以外にそのまま適用することには慎重にならなければならない。しかし、従来型サービス、ITインターフェース・サービスとも、消費者が思うことは意外に共通している点は注目に値する。

ITが未成熟な頃であれば、技術自身への驚きもあり、一般利用者の許容範囲も大きかったと思われるが、ITの成熟にしたがって利用者はITを特別なものだとは思わなくなっている。例えば、消費者の問合せにEメールで回答するサービスに対して、数年前までは「24時間以内の回答ならば許容できる」とする利用者が8割近くに達していたが、近年では、半数以上が「4時間以内の回答」を求めているという調査結果もある。

対人でも対ITでも利用するのは同じ人間である。ITを使ったサービスを受け入れてもらうためには、ITを特別視することなく一般サービスの中に位置づけた上で、顧客がたどる経験と利用者視点に立った品質をきちんと分析する必要があるだろう。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF サービス評価研究の現在 [183 KB]