低炭素社会に向けた民生部門対策の設計
主任研究員 生田 孝史
2009年4月
目次
1. はじめに
2. 民生部門対策の現状
2.1. エネルギー消費の構造
2.2. 従来の民生部門対策の傾向
2.3. 民生部門が抱える課題
3. 民生部門対策の基本設計の考え方
3.1. 前提条件:見える化
3.2. インセンティブ試案
4. 家庭部門対策のインセンティブ設計
4.1. 個人アンケートからの示唆
4.2. 先行事例からの示唆
4.3. 有効な家庭部門対策の検討
5. おわりに
要旨
事業所や家庭などの民生部門は、2007年度速報値で1990年度比40%以上のCO2排出増を示しており、その対策の成否が我が国の地球温暖化対策のカギを握る。民生部門対策の進展は、京都議定書目標達成のための海外からの炭素クレジット調達の追加負担を抑制するだけでなく、長期的に国民一人ひとりの意識変革による低炭素社会への転換を図るためにも重要である。
設備・機器などハード導入支援に偏り、事業者や個人の行動に関しては普及啓発が中心であった我が国の民生部門対策は、十分な成果を得ていない。あるべき民生部門対策とは、リアルタイムの計測器導入によって、事業所や家庭レベルの排出量の「見える化」を図った上で、個人の排出削減行動を促すために、例えば、排出目標超過分への課金、排出削減分の買い取り、家庭部門への時間帯別料金制度などのインセンティブの導入が考えられる。
個人アンケート調査からは、地球温暖化問題への関心が高いものの、自己負担が生じないインセンティブが高く評価される傾向が得られた。抜本的な家庭部門対策のためには、全ての家庭が参加可能な仕組みを導入すべきであり、早急に、家庭部門の「見える化」インフラ整備が必要である。国内でも、個人行動を促すためのインセンティブ導入の事例はあるが、カナダ・オンタリオ州や英国の事例と比べると、対象が限定され、「見える化」との連携も不十分であった。電力市場が完全自由化されていない我が国は、電力会社主導による測定器の全戸配布の障害が小さい。電力の負荷平準化効果と、海外からのクレジット取得回避費用を勘案すれば、政府の温暖化対策予算の2%程度で、有効なインセンティブ設計が十分に可能である。
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