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密度の向上が重要とみられるサービスにおける生産性向上

主任研究員 木村 達也

2009年4月

株式会社ナビタイムジャパン(以下ナビタイム)、株式会社加賀屋は、ともに高水準のサービス提供により、サービス産業生産性協議会(代表幹事:牛尾治朗ウシオ電機株式会社代表取締役会長)による「ハイ・サービス日本300選」を受賞している。両社は、提供しているサービスの内容は大きく異なるが、その生産性向上の方法には共通点がみられる。更に宅配便を創始したヤマト運輸株式会社の生産性の向上方法にも両社との共通点がある。ここでは、これらの会社の事例をもとに、サービスの生産性向上の方法について述べる。

ナビタイムのサービス

ナビタイムは、96年に中堅空調設備メーカー 株式会社大西熱学の社内ベンチャーとして、路線探索エンジンを用いたwebによる目的地までのナビゲーションサービス事業を開始し、2000年に独立した法人となった。その後、(1)鉄道運行情報(電車の事故、遅延情報)提供、(2)お店までの経路表示を行うグルメ検索、(3)病院検索、(4)電車乗換ルートを表示する駅構内図表示、(5)CO2排出量が最も少ない移動ルートを提案するエコルート-などの新サービスを提供している。

ナビタイムは、当初のサービスである路線探索エンジンという技術シードは持っていたが、その後提供を開始したサービスは、ユーザーからの要望などすべてユーザーのニーズを基礎にするものである。またナビタイムのカスタマーサポートの理念は、「社員全員が、ユーザーである」というものである。

このようなユーザーのニーズに基づくサービス開発体制・サポート体制をとっているのは、一番重要なことはサービスをユーザーに使ってもらうことと認識しているからである。生産性向上も、ユーザーに使ってもらうことを第一に考えることから達成されるのであり、最初から効率化を図っても上手くいかないとみている。

加賀屋のサービス

加賀屋は、石川県七尾市の和倉温泉おいて旅館サービスを提供している。加賀屋の基本は「お部屋」と「人」によるおもてなし力である。「人」、すなわち従業員による役務サービスは、お客様に提供する商品の最も重要な構成要素であり、加賀屋の客室係の数は業界平均に比べ圧倒的に多い。

また、料理を厨房からお客様のお部屋まで自動搬送する総延長400mに達するシステムを導入し、年間4,000万円の維持費をかけるが、この導入により従業員は削減していない。システムの導入は、客室係がお客様に対応する時間を増やすために行ったものである。

このような業務体制をとるのは、顧客満足を高めることが、集客力アップ、収益向上につながると考えているからである。すなわち、コスト削減や効率化は顧客満足につながるものではない。「おもてなし力」の向上により、お客様に来て頂くことが何よりも大切で、それが生産性の向上にもつながると考えている。

「サービスの密度」を高めることが大切

両社のサービスに対する考え方で共通しているのは、顧客にサービスを利用してもらうことを第一と考え、そのために顧客視点からのサービス提供を行っていることである。そしてこうした取り組みが結果的に、生産性の向上につながっている。

このような状況は、ヤマト運輸の宅急便(ヤマト運輸の宅配便の商品名)でも共通している。宅急便の創始者である小倉昌男氏は、著書『小倉昌男 経営学』のなかで、宅急便を開始する際に毎月の支店長を集めた会議の冒頭で、「これからは収支は議題としないで、サービスレベルだけを問題にする」と述べ、「サービスが先、利益は後」の標語を金科玉条として守って欲しいと宣言したと記している。この背景には、宅急便での利益の向上には荷物の密度を高める必要があり、そのためにサービスの差別化が求められたことがある。

このような3つの事例からみて、サービスの生産性向上には、製造活動とは異なったアプローチが必要だと思われる。すなわち生産性は、

生産性 = 産出量 / 投入量

と表されるが、製造活動では生産性向上に多くの場合、(1)上式において分母である投入量が一定のもとで分子の産出量を多くする、または(2)分子である産出量が一定のもとで分母の投入量を少なくする-といった考え方が取られる((1)と(2)の複合も含む)。

しかし、サービスにおいては、需給の同時性という特性から、供給サイドの設備・人の稼動についての繁閑の調整が難しいという特徴がある。すなわち製造活動では、在庫により設備・人の稼動の平準化ができるが、サービス活動ではこれができない。

したがって生産性向上には、まず需要を喚起し「サービスの密度」を高めるアプローチが必要になる。すなわち、顧客の需要を喚起しサービスの密度を高めるため、まずサービスの質の向上を図るアプローチである。これを上式にみると、まず分母の投入量増加によりサービスの品質を向上させ、その結果として分子の産出量を増加させる。この際に、産出増が投入増を増加率で上回ることにより、生産性が向上することになる。

そしてこのようなアプローチで何より重要なのが、投入の増加によりサービスの品質を向上させるために、顧客視点からのサービス提供を行うことである。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 密度の向上が重要とみられるサービスにおける生産性向上 [192 KB]