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英国における「公的サービス2.0」の発想を地域SNSづくりの参考に

上級研究員 吉田 倫子

2009年1月

英国では、2004年以降、国民や住民のいわゆるCGM(1))/UCC(2))的な機能を公的部門に取り込んだサービスが提供されてきた。国民が国会議員の発言をチェックし、発言ごとにコメントを書き込めるサービスや、地域の要望に対して議員からコメントを貰うことができるサービス、自分の住んでいる地域についての「気づき」情報を他の住民と共有し、地域全体で何件の問題があがり、何件解決されているのかが解るようになっているサービス等がある。

現在では転換期を迎えているこれらのサービスではあるが、しかしながら、単にユーザである住民側からの一方的な情報提供で終わらずに、地域の代表者とのインタラクションが可能であるという点では優れており、サービスそのものは日本に応用できるものが多い。特に、自治体がコミットして住民に提供している地域SNS等には、これらのサービスをSNSの機能の一部として含むこと等が期待される。

公的2.0といわれる英国のサービス例

「They Work For You」は、英国国民のオンライン・デモクラシー・プロジェクトとして、mySocietyという公認慈善事業が運営しているサイトであり、国民の政治への直接参加を促すことを目的としている。本サービスでは、自分の住んでいる地域の郵便番号を入力し、代表者である国会議員の発言等を定期的にチェックしたり、ハンサードと呼ばれる英国議会議事録を閲覧したりすることができる。また、発言ごとにコメントを書くことができ、議員の発言に対して国民同士でディスカッションを行うことができる。この団体は、他にPublicWhip.org.uk, National Rail Timetable等、同様の公的2.0サービスを提供しており、先行して1998年から提供している「Up My Street」からサービスのヒントを得たようである。

その「Up My Street」は、引越し等で別な地域に転居する際、人々は転居先の情報収集を行うが、その際の情報収集コスト(時間・お金)を抑えることを目的として作られたサービスである。検索したい地域の郵便番号か地域名を入力すれば、その地域住民のおおまかな所得層、学歴、子供を持つ家族の多さ、住宅物件情報などの地域特色や、「売ります&買います」情報などを知ることができる。

「Hear From Your MP」は、英国下院議員からコメントをもらったり、英国下院議員や地域の人々と、自分の地域における問題についてディスカッションをしたりするサイトである。事前に登録する必要があるが、サービスの流れは次のとおりである。

(1)ある住民がある問題についての詳細意見を記載すると、(2)その問題が、地域ごとの問題一覧表に入れられる。(3)その意見に対して同一地域の有権者からの賛同を得られれば、(4)サイト管理者が、「○○人の地元有権者が、あなたの意見を聞きたがっています」と仲介を行うというものである。仲介の結果、議員が必ずしも返事をくれるとは限らないが、一方通行ではなく、意見とそれに対する返事が公開されており、他の有権者も遣り取りを閲覧することが可能である。

「Fix My Street」は、地域内で壊れている箇所を修復して欲しいときにレポーティングするサイトである。周辺地域で起こっている問題、解決された問題が一覧になっており、住民同士で共有することができる。全体で何件の問題があがり、何件解決されているのか、どのような問題が放置されているのかが解る。レポーティングの流れとしては、これも前述のサービスと同様に、(1)郵便番号か通り名を記入して地域を特定し、(2)地図上で印をつける。(3)カテゴリ(駐車場、バス停、等場所を特定するプルダウンメニュー)を選び、ブログ形式で問題を書き込む。(4)写真添付も可能。

「Patient Opinion」は、患者、患者の家族、友人、関係者らがブログ形式で病気などについてのオピニオンを書くサイトである。サービスはNPOによって運営されている。患者がヘルスケア関連の経験を書き、共有することで、NHS(英国国民医療サービス)のサービス向上につなげようとするのが狙いである。

日本のサービスへの応用

英国におけるこのような取り組みは、日本の地域SNSを考える上で参考になる。

2003年に熊本県八代市を先駆として、総務省の実証実験の効果もあり、以降、日本各地で数多くの地域SNSが立ち上がったが、維持・継続が課題となり、閉鎖もしくは更新頻度が低下したまま放置状態となっている地域SNSは少なくない。

総務省が財団法人地方自治情報センターと共同で実施した地域SNSの活用状況等に関する調査(2007)(3))では、「現在どのように地域SNSに関与しているか」・「将来どのように関与したいか」という2つの問いに対して、市町村からの回答はどちらの問いに対しても「行政情報の提供」「災害情報や不審者情報などの提供」といった行政からの情報提供によるものが多かった。

災害情報の情報交換については、「ごろっとやっちろ」で既に実施されており、これは諸外国からは、「Disaster Preparation(災害対策)」の一例として注目されている。「行政情報の提供」については、一方的に情報提供を行うのであれば、自治体の公式サイトと変わりはなく、日本の地域SNSには、自治体が住民の意見を吸い上げ、Web上でのインタラクションを通じて地域政策に反映させていくという英国のような仕組み作りの視点に欠けている。

日本にも議員らが地域SNSに参加し、住民とコミュニケーションを行っている事例は存在するとはいえ、実現するにはやはり課題が多い。しかし、例えば、「Up My Street」や「Fix My Street」など、地域における住民の「気づき」情報や要望について一覧化し、自治体等がそれら要望について応えていくプラットフォーム作りは、日本でも応用可能である。

1) 
CGM: Consumer Generated Media
2) 
UCC: User Created Contents
3) 
「地域SNSの活用状況等に関する調査の実施結果」
http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/rdd/community/survey/sns_survey.html

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 英国における「公的サービス2.0」の発想を地域SNSづくりの参考に [211 KB]