富士通総研

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中国経済のゆくえ
~二期目の胡錦濤政権の政策を検証する~
-特別企画コンファレンス-

概要

2期目に突入した胡錦濤政権は、残された最後の5年間をどのような政策と制度改革をもってこれまでの経済成長を持続し、社会の安定を維持するかが注目を集めている。また、2万社以上の日本企業が中国に進出し、関連会社も含めれば、中国で設立されている日系企業は4万社に達するといわれている。既に、米国経済はサブプライム問題の影響により景気が軟調になっており、そのなかで、日本企業にとって中国市場は米国市場の萎縮を補う重要な存在になっている。こうしたなかで、小泉元総理の在任期間中、冷え切った両国関係は双方の努力により改善に向かっている。

こうした大きな時代的流れを踏まえ、中国経済・中国社会の今後の動きを検証し、新たな日中関係を構築するために、去る2008年5月19日月曜日に、特別企画コンファレンス『中国経済のゆくえ ~二期目の胡錦濤政権の政策を検証する~』をテーマに経団連会館で行われた。

今回の特別企画コンファレンスでは、慶應義塾大学 学部長・教授 国分良成氏による基調講演「胡錦濤国家主席訪日と今後の日中関係」において、これまでの日中関係の大きな流れと5月初旬に訪日した胡錦濤の意義などをブリーフィングしていただいた。そのうえで、富士通総研経済研究所の中国人研究員 朱炎、金堅敏、柯隆と客員研究員 内藤二郎による研究発表があった。これらの研究発表を踏まえ、中央大学大学院 戦略経営研究科 教授 服部健治氏をお迎えし、研究発表を行った当社の研究員とともに、政治、経済、社会、産業、金融などの視点から、パネルディスカッションを行った。

以下では、今回のコンファレンスで提示された重要な論点を整理してみることにする。

まず、国分良成教授の基調講演では、日中関係の大きな流れとして改善の方向に向かっていることが指摘された。小泉元総理の時代において確かに日中関係が悪化したが、日中関係の改善を望んでいるのは日本だけでなく、中国側も改善を望み、そのための努力と妥協も目に見える形で表れている。安倍前総理は就任直後の訪中で戦略的な互恵関係の構築を中国側に提案し、中国側もそれを受け入れた。昨年、温家宝総理の訪日は中国で氷を溶かす旅と性格付けされ、今年の胡錦濤国家主席の訪日は98年江沢民前主席の訪日以来、10年ぶりだった。

胡錦濤主席訪日の際、歴史認識や戦争責任などの論議がいっさい提起されなかった。むしろ、未来志向の新たな日中関係を構築するために、妥協の姿勢が強く印象付けられた。今年に入って、日中関係は決して順調に運ばれたわけではない。特に、冷凍ギョーザの中毒事件によって中国食品離れが日本で進んでいるが、日本での嫌中感情を和らげるために、胡錦濤主席の訪日のなかでさまざまな努力がなされた。北京を出発する前に、特別に日本人記者と会見し、そのなかには親中のメディアだけではなく、中国のことを厳しい目で報道するメディアの特派員も招待され、異例な柔軟姿勢が示された。

当初、心配されたチベット独立支持の活動家による抗議行動なども大きな問題にはならず、訪日は大きく成功したといえる。今後の日中関係について、かつての蜜月のような時代に回帰することはないが、大人の関係に発展し、安定した関係になっていくと思われる。

そして、当社研究員による研究発表では主に4つの視点から中国経済を分析してみた。

まず、上席主任研究員の柯隆は、経済成長の源泉とリスクの視点から中国経済成長の原動力を解明し、構造的なリスク要因を分析した。高貯蓄→高投資→成長は投資主導の経済成長を性格づけしている。しかし、消費(内需)は十分に振興されていないため、マクロ的に生産能力は過剰になっている。国内で消費されない過剰生産能力が輸出に向けられ、貿易不均衡の拡大がもたらされている。

こうした基本的な成長モデルを取り巻くリスク要因として、投資効率の低下、格差の拡大と環境公害問題の深刻化などがあげられる。そのなかで、経済成長を不安定化させる構造要因は政治の一党支配と民主主義を前提とする市場経済とのミスマッチが懸念されている。2012年に現在の胡錦濤政権が退任し、新しい指導者が誕生する予定である。それをきっかけに、中国政治、経済と社会が大きく混乱する恐れがある。

また、客員研究員の内藤二郎は中央と地方の財源配分を軸に、中国における所得格差の実体を明らかにした。1994年、中央と地方の財源配分について「分税制」が導入された。それによって中央政府への財源集中により所得再配分の権限が強化された。問題は地方政府間の所得格差が縮小せず、問題は日増しに深刻化している。

中国における地域格差拡大の背景に、所得再配分機能が弱いほか、戸籍管理制度によって農民の立場が不利になっていることも指摘される。中国にとって経済成長を続けるためには、所得格差を解消する必要があり、それに向けて、地域間の所得格差を縮小する税財制度の強化と戸籍管理の緩和などが求められている。

更に、上席主任研究員の金堅敏は企業の技術革新の視点から中国企業の「研究・開発」(R&D)の強化とそれに関する問題点について分析を行った。メイド・イン・チャイナの強さと弱さが露呈しつつある現状において、中国企業は技術力不足に直面している。いかにして人材を確保し、研究・開発を強化していくかが重要な課題である。

巷では、中国製品の安全性に対する心配が強まっているが、「安かろう良かろう」の中国製品のイメージをどのように確立させるかが注目されている。また、労働力過剰といわれている中国労働市場でも実は管理層を中心に人材不足という問題が生じている。今後、中国企業が成長を続けるためには、技術力を向上させる必要があり、そのためには、研究・開発を強化しなければならない。

最後に、主席研究員の朱炎はグローバルの視点からチャイナマネーの動きをサーベイした。05年7月、中国は人民元の切り上げに踏み切った。その背景に、高成長を続ける中国経済への期待から海外から巨額のホットマネーが流入し、その結果、外貨準備が大きく積み上がった。

中国で蓄積されている外貨流動性をいかにして運用するかは中国にとって重要な課題であると同時に、諸外国にとっても重要な関心事になっている。チャイナマネーは、中国投資公司(CIC)を通じて海外への投資を始めている。今のところ、チャイナマネーはまだ日本での投資を行っていないが、いずれ日本にも上陸すると思われる。そして、人民元の今後の動向については、更に切り上がる可能性が高い。このことは中国の輸出に大きなインパクトを与えるとともに、中国に進出している外国企業にも大きな影響を及ぼすことになる。

以上の4人の研究発表を受けて、服部健治教授を交えて、パネルディスカッションが行われた。主に、中国経済発展の今後の展望、中国経済のリスク要因とグローバルの視点から見た中国経済の存在感について議論が展開された。

一般的に、中国経済の今後の動きについて楽観論と悲観論に二分されるが、パネルディスカッションでは、中国経済はこれからも成長を続けていくことについてコンセンサスが得られた。ただし、それを取り巻くリスク要因、すなわち、所得格差、環境公害問題、企業の弱い技術力と人民元の政策運営などによって不安定な成長になる可能性が高い。

日米というグローバルの視点から見た場合、中国経済はこれからいっそう存在感が強まるものと予想され、貿易と投資を通じた相互依存関係も更に強化されるものと思われる。ここで、重要なのは日米中の経済協力関係を強化すると同時に、中国には更なる市場経済化の制度改革と政策運営の透明性の強化を促す必要がある。

13時~13時10分 開会挨拶
富士通総研 代表取締役会長 高島 章
基調講演
13時10分~13時40分 胡錦濤国家主席訪日と今後の日中関係
慶應義塾大学 学部長・教授 国分 良成
第一部 研究報告
13時40分~14時 北京五輪以降の中国経済-経済成長の源泉とリスク要因
上席主任研究員 柯 隆
14時~14時20分 発展を阻む格差問題の解消に向けて
客員研究員 内藤 二郎
14時20分~14時40分 『革新創造国』造りに向かう中国のチャレンジ
上席主任研究員 金 堅敏
14時40分~15時 世界の資金循環の変化をもたらすチャイナマネーの新動向
主席研究員 朱 炎
15時~15時20分 休  憩
第二部 パネルディスカッション
15時20分~16時55分 日米中の新たな協力関係の構築
【パネリスト】 中央大学大学院 戦略経営研究科 教授 服部 健治 氏
主席研究員 朱 炎
客員研究員 内藤 二郎
上席主任研究員 金 堅敏
上席主任研究員 柯 隆
【コーディネーター】 富士通総研 専務取締役 根津 利三郎
16時55分~17時 閉会挨拶
富士通総研 専務取締役 根津 利三郎

(役職などは当時のもの)

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 中国経済のゆくえ
~二期目の胡錦濤政権の政策を検証する~
-特別企画コンファレンス-
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